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20090816 セミの漢字

 アブラゼミ$${^{*1}}$$の事を調べている内に面白い事に気付いた。「せみ」を表す漢字が沢山ある。「$${^{*2}}$$」だけではないのだ。まず「蜩(ちょう)」である。漢和辞典を見るとセミ全般を言い表すのはこの「蜩」で、セミそれぞれは「蝉」のようだ。中国の漢字字典「正字通$${^{*3}}$$」にそう書いてあると「千虫譜$${^{*4}}$$」にも書いてある。また「蝉」は世間一般で使われる様な通語だとも書いてあった$${^{*5}}$$。

 漢和辞典の虫編の頁をめくっているとセミを表す漢字が次々と出てくる。「虫+古$${^{*6}}$$」はニイニイゼミ$${^{*7}}$$、「虫+乍$${^{*8}}$$」はクマゼミ$${^{*9}}$$である。クマゼミの漢字は、鳴き声が「シャーシャー」なのでその音を持つ「乍(サ、ジャ、サク)」と虫偏とを組み合わせてできたに違いない。ニイニイゼミの方の「古」は鳴き声ではなく、「固い」ことを意味し、虫自体の体の様子を表している。ニイニイゼミと同時にケラ$${^{*10}}$$の意味もあるらしい。現代人からするとニイニイゼミとケラとでは全く違う昆虫に見えるが、昔の人にとっては同じ仲間に見えたのだろう。ニイニイゼミの土の付いた抜け殻$${^{*11}}$$を見ると何となくケラが土中から出てきて皮を脱いでセミになると考えてしまっても不思議ではない。

 「虫+召$${^{*12}}$$」はミンミンゼミ$${^{*13}}$$。「虫+夷$${^{*14}}$$」はどんなセミか判らないが、セミの一種、「虫+吉$${^{*15}}$$」もセミを表す。これらも鳴き声から作られた字だろう。

 「虫+兒$${^{*16}}$$」はツクツクボウシ$${^{*17}}$$。鳴き声$${^{*18}}$$からではなく、子供(兒、児)のような形に見えるセミらしい。「蜻」はムギワラゼミ。どんなセミなのか不明。ニイニイゼミの事か。「虫+堰-土$${^{*19}}$$」もセミの一種。詳細不明。「虫+奚$${^{*20}}$$」「虫+秦$${^{*21}}$$」「虫+唐$${^{*22}}$$」もセミの一種で、ニイニイゼミらしい。「虫+寅$${^{*23}}$$」もツクツクボウシ。「虫+惠$${^{*24}}$$」もニイニイゼミ、「虫+燎-火$${^{*25}}$$」はミンミンゼミもしくはクマゼミ。

 これだけセミに関する漢字があると言う事は、それだけ関心が高かったと言う事だろう。エスキモー語に雪の種類を表す言葉が沢山ある$${^{*26}}$$のを思い出した。

*1 20090815 アブラゼミの語源
*2 20000106 蝉丸
*3 正字通
*4 20090710 江戸時代の蛙の奇形
*5 千虫譜(拡大画像 1-27) | 描かれた動物・植物
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*7 ニイニイゼミ - 昆虫(昆虫綱) - Yahoo!きっず図鑑
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*9 クマゼミ - 昆虫(昆虫綱) - Yahoo!きっず図鑑
*10 ケラ - 昆虫(昆虫綱) - Yahoo!きっず図鑑
*11 ニイニイゼミの抜け殻
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*13 ミンミンゼミ - 昆虫(昆虫綱) - Yahoo!きっず図鑑
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*17 ツクツクボウシ - 昆虫(昆虫綱) - Yahoo!きっず図鑑
*18 20090301 田畑彦右衛門
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*26 言語の違い、認識のちがい

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