20010425 発電出来る服
最近、私の記事の形式とよく似たサイト$${^{*1}}$$を見つけた。そこの記事を読んでいたら、「発電出来る服」が紹介してあった。一体、発電出来る服とはどんなものか。極めて興味深い。
合成繊維の服は冬になると高電圧を発生するようになる。静電気$${^{*2}}$$のことだが、これを「発電」と言っているのではない。電源として使える電気を発電する服のようだ。
記事の中のリンク先$${^{*3}}$$を見てみる。「光があたると発電する服」でモバイル機器を常時充電?とある。どうも太陽電池$${^{*4}}$$のようである。リンク先は日本語で150字程度の記事であった。シュトゥットガルト大学$${^{*5}}$$電子物理工学研究所の研究者たちが、光があたると発電する合成繊維を開発した、と書いてあるが、詳細は全く判らない。この合成繊維で服を作れば光が当たるところにいるだけでモバイル機器が動かせるというのである。この服は電気機器ということになる。電気関連の装置は大抵、水に弱いので、この服が洗濯出来ないかもしれない。これを克服すれば非常に便利なものとなる。この記事ではこんなことばかり書いてあって肝心の発電の原理が全く触れられていない。
もともと米国のサイト$${^{*6}}$$の記事の翻訳らしく、その元記事$${^{*7}}$$を辿ってみる。日本語の記事は寸分違わず翻訳してあるだけであった。ただし、開発したとされるInstitute of Physical Electronics at the University of Stuttgartのリンク設定が間違っていた。正しくはここ$${^{*8}}$$である。しかしここにアクセスしてもInstitute of Physical Electronicsには直接辿り着けないので、日本語訳の記事ではリンクでInstitute of Physical Electronics(電子物理研究所)$${^{*9}}$$に行けるようになっている。
ところが光で発電する服のことがどこにも書いてない。英語とドイツ語で書いてあるのでかなり見落としがあると思うが、それらしきページが見つからない。シュトゥットガルト大学には他の電子物理研究所があるかもしれないと思ってサイトの中$${^{*10}}$$を探し回ったが、どうもここだけのようだ。
それらしきページ$${^{*11}}$$を見つけた。低温で形成出来るアモルファスシリコン太陽電池$${^{*12}}$$を開発した、と言う記事である。通常、アモルファスシリコンの形成は200℃程度の温度が必要$${^{*13}}$$であるが、シュトゥットガルト大学電子物理研究所では80℃で形成する方法を開発したという。
アモルファスシリコンはメッキの膜のように非常に薄い膜で出来上がる。メッキと同じように何かメッキをする板が必要である。この板を「基板」と呼ぶ。アモルファスシリコンを作るには200℃の温度が必要なので基板も200℃で融けないような材質である必要がある。通常はガラス板などを使う。アモルファスシリコンの形成温度が低いと言うことは熱に弱い材質でも基板として使えると言うことである。
そこで100℃以下でアモルファスシリコンが形成出来れば基板にポリエチレンやPETが使える、というのだ。これがおそらく「発電出来る服」の元だろう。合成樹脂基板にアモルファスシリコン太陽電池が形成出来る→合成樹脂の太陽電池→合成繊維の太陽電池→発電出来る服、となったに違いない。
*1 あけてくれ「出エジプト日記」
*2 関西テレビ あるある大事典
*3 HotWired Japan
*4 シャープ 太陽電池の部屋
*5 Homepage Uni Stuttgart
*6 Wired News
*7 How about this one?
*8 European Database of Suppliers of Energy Efficient and Sustainable Building Products and Services from James & James
*9 Institut fuer Physikalische Elektronik
*10 Fakultaeten und Institute
*11 Low Temperature Deposition of Amorphous Silicon Based Solar Cells
*12 シャープ 太陽電池の原理と技術
*13 太陽光発電新時代の現状と将来の展望