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20100226 スキーは何故滑るのか(4)

 スキーは何故滑るか$${^{*1}}$$の更に更に続き。摩擦$${^{*2}}$$は何故発生するか。物と物とが擦れ合うからだ。スキーも同じである。スキーで滑っている時はスキー板の滑走面と雪とが接触しているので、常に摩擦が発生している。この摩擦はどのように発生しているのか。

 物と物とが接触している部分を顕微鏡でどんどん拡大していくと本当に物と物とが接触している部分が現れてくる$${^{*3}}$$。スキー板と雪とがぺったり接触している様に見えるが、細かく見ると接触している部分とそうでない部分がある筈である。接触していれば互いに何らかの作用を及ぼし合うので、動こうとすれば力が必要になってくるだろう。と言うことは接触している部分が多ければ多い程、摩擦力が大きくなってくると想像できる。摩擦力は見かけの接触面積に依存しない$${^{*4}}$$が、その接触面を押さえつける力の大きさに比例する。これは押さえつける力によって微視的な本当の接触部分が増えるからである。

 この接触している部分を更に拡大して考えてみる。両者は原子レベルで接触している筈である。原子レベルと言うのは物と物とのそれぞれを構成する原子が接触し合っていると言うことである。摩擦力が発生すると言う事実から考えればこの原子レベルの接触はかなり強力に接合していると考えられる。この接合が崩れて初めて物が動き出す。すると互いの接触部分は常に破壊されながら動いていることになる。逆に考えれば壊れ易ければそれだけ摩擦力が小さくなると言うことだ。

 接触面に液体が介在しているとどうなるだろう。これは滑り易くなる。液体は自由に動くから原子レベルの接触部分は簡単に動くようになるだろう。気体$${^{*5}}$$ならばもっと摩擦はなくなる。これが流体潤滑$${^{*6}}$$の仕組みである。接触面が乾いていて固体同士が接触している場合はどうだろう。どちらかが非常に壊れ易い性質を持っていれば摩擦は小さくなる。特に横滑り方向だけ壊れ易いものであれば、原子レベルでの接触面積を増やすことなく動く方向にだけ壊れるので非常に都合が良い。そういった性質を持つ物質は固体潤滑剤$${^{*7}}$$として使われる。蝋燭のろう*$${^{*8}}$$なども固体潤滑剤の一種である。

 スキーの滑走の本質は、雪でなくてもスキーが可能$${^{*9}}$$であることから、固体同士の接触による摩擦現象だと考えられる。雪や氷の結晶とスキー板の滑走面とで壊れ易い方がどんどん削れて滑っていくのだろう。固体同士の摩擦によって熱が発生するだろうから、その熱によって雪の結晶の表面が溶けて流体潤滑作用が加わって少し滑り易さが増すかもしれない。雪が湿り過ぎると流体潤滑の作用よりも接触面積が増えて摩擦力が増えるのだろう。雪の温度や湿り具合によってスキーの滑りが変わるのは、これらが原因になっている所為に違いない。スキーで滑る人にとってゲレンデの雪質$${^{*10}}$$は何ともしようがないので、雪の状態に合わせてスキー板の滑走面のワックスを塗り替えて雪の結晶で削れ易い接触面を作り、滑りを良くするのだろう。

 少し前の研究で氷の表面は氷点下でも水の状態になっている$${^{*11}}$$と言うことが解っているらしいが、これとスキーが滑ることとは直接関係がない様に思われる。

*1 20100225 スキーは何故滑るのか(3)
*2 20031129 空気の摩擦
*3 マイクロトライボロジーとは 摩擦力と凝着力の関係
*4 ●新日鉄Gr●(株)日鐵テクノリサーチ/トライボロジー技術
*5 Q271★どうしてドライアイスを入れた筒を押すとスーッと流れるように走るみたいに見えるのですか? また学校ではこれは抵抗の実験で摩擦の無い状態を表すときに使ったのですが、なぜ摩擦が無くなるのですか?
*6 住鉱潤滑剤株式会社:潤滑剤のはなし:ロゴマークの意味
*7 潤滑塗装|固体潤滑コーティング剤(乾性被膜潤滑)でトライボロジーに関わる諸問題を解決
*8 境 界 潤 滑 と 潤 滑 剤
*9 境界潤滑と潤滑剤
*10 積雪用語
*11 氷表面の謎を解く:日経サイエンス

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