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20000504 SOI

 シリコン半導体素子の次世代を担う技術としてSOI技術$${^{*1}}$$というものがある。この技術はここ十数年で実用化された。SOIとはSilicon On Insulatorの略でシリコン単結晶層を絶縁体Insulator上に形成する技術である。絶縁体には普通、酸化シリコン$${^{*2}}$$が使用される。酸化シリコンは良質な絶縁体であるとともにシリコンを高温で熱すれば容易に形成することが出来る。その正体は石英ガラス$${^{*3}}$$である。
 SOI技術の用途は大電流デバイス$${^{*4}}$$と小電流デバイス$${^{*5}}$$との複合モノリシックIC$${^{*6}}$$での電気的分離やMOSトランジスタ$${^{*7}}$$の寄生容量$${^{*8}}$$低減効果による動作速度の高速化等である。

 SOIには2種類の形成技術$${^{*9}}$$がある。一つはSIMOX$${^{*10}}$$と呼ばれる技術でSOIを作る。この方法で作られたウェハーを用いて最新のPowerPC$${^{*11}}$$が作られるようである。

 もう一つは2枚のシリコンウェハを貼り合わせ$${^{*12}}$$てSOIを作る方法である。片方または貼り合わせる両方のシリコンウェハの表面に酸化シリコンの薄膜を形成し空気中にゴミやほこりが浮遊していない清浄な雰囲気内でウェハーを貼り合わせる。
 ウェハーとウェハーとの間には接着剤は必要ない。というより酸化シリコンが接着剤の役目をする。室温で貼り合わせたウェハーを酸化シリコンが融けそうな温度にしてやるとウェハー同士が強固に接合する。

 このウェハーを貼り合わせる時に巧くやらないとウェハーとウェハーとの間に気泡が出来てしまう。丁度大きめのシールを貼った時、所々に空気の入った粒が出来るようなものである。シリコンウェハーは単結晶$${^{*13}}$$なので石のように硬い。だからシールのように空気の入った部分が目に見えて膨らむわけではない。

 シリコンウェハは見た目は灰色というか黒というかいぶし銀というか黒鉄色というか何と表現していいか分からない金属光沢色をしている。金属光沢色をしているので重そうであるが鉄の3分の1以下の重さしかない。見た目の重さでは金塊$${^{*14}}$$と逆である。透明ではない。透明ではないのは可視光線の領域の話であって赤外線の領域では透明である。赤外線が見える生物にとってはシリコンウェハーはガラス板のように見えるかも知れない。

 赤外線を可視化する装置$${^{*15}}$$を使って貼り合わせたウェハーを赤外線光源にかざして見ればウェハーとウェハーとの間に出来た気泡を見ることが出来る。ちょうど硝子板を二枚、水を介して貼り付けたような感じだ。気泡の影をよく見ると空気中のゴミが挟まれて出来た気泡には気泡の真ん中に小さなゴミの影が映っている。ゴミが入っていない気泡もある。これはウェハーの非常にわずかなうねりや部分的な反り$${^{*16}}$$によって出来たものであろう。

 驚いたことにこのゴミの入っていない気泡はシールの気泡と同じ振る舞いをする。シールの気泡は指で押せば気泡が移動する。同様にウェハーの気泡も熱する前の室温で貼り合わせた状態であれば、ウェハーの気泡の部分に力を加えてやると気泡が移動する。赤外線をかざしながら見ると、気泡の移動の様子が観察できる。

 シリコンウェハーはシールに比べて非常に硬いので指で押した程度では移動してくれない。そこで2枚のウェハー間に電圧を印可して静電引力によって力をかけてやる。すると気泡はウェハー内を移動する。ただしこの方法ではウェハー内を移動するだけでシールの気泡のように外に追い出すことはできない。

*1 SOI大規模ASICに適した低電圧・高速の負荷駆動回路を開発
*2 石英ガラスとは
*3 Nippon Silica Glass
*4 マイクロチップ~パワーデバイス
*5 Panasonic Micro Computer
*6 日立パワー半導体
*7 MOS型ICの種類
*8 L1999006603-薄層SOI型絶縁ゲート型電界効果トランジスタの製造方法
*9 The Buried Oxide of Silicon on Insulator Materials
*10 IBM マイクロエレクトロニクス
*11 PPC750CX_SOI_SiLK_Cu11
*12 Bonded SOI Wafers
*13 20000428 CZ
*14 ■Au-金、Gold 原子番号79 原子量196.967
*15 サーモグラフィ装置
*16 ウェーハ製造技術の概要・その2

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