20030403 正確さと判り易さ
野口悠紀雄$${^{*1}}$$氏の『「超」文章法$${^{*2}}$$』を読んでいたら、ハッブル望遠鏡$${^{*3}}$$のことが出てきた。
ハッブル望遠鏡$${^{*4}}$$とは人工衛星に搭載された宇宙空間に浮かぶ望遠鏡で、周りに空気がないから星などがすこぶるよく見える$${^{*5}}$$。
1990年に打ち上げられた。2002年にはスペースシャトルによって新しいカメラが望遠鏡に取り付けられた$${^{*6}}$$らしい。新しいカメラがどれくらいの能力かというと「ワシントンから東京$${^{*7}}$$を見て、2m離れて飛んでいる二匹のホタルを見分けられる$${^{*8}}$$」というのである。それぐらい遠くにある物を細かく見分けることが出来るというのだ。
この表現を野口氏は判り難いという。直観的に「ワシントンから東京の距離」が多くの人に掴めないからだという。そこで氏は「札幌から東京」に置き換えた方がいいと提案している。この方が実生活の距離感に近いからだろう。「ワシントンから東京」を「札幌から東京$${^{*9}}$$」に変えるとその距離は十分の一程度になる。だから二匹のホタルの間の距離は2mの十分の一の20cm、となる。
「札幌から東京を見て、20cm離れて飛んでいる二匹のホタルを見分けられる」と書き換えていいのだろうか。
ハッブル望遠鏡の性能を説明する上では適切ではないだろう。「ワシントンから東京・・・」の比喩で表現している望遠鏡性能の項目は二点ある。一つは細かく見分けられること、あと一つは「ワシントンから東京」の距離でも微弱なホタルの光を捉えることが出来ることである。
従って「札幌から東京」の距離したら、ホタルではなくもっと弱く光る物をもってこないと適切な言い換えにはならない。見たことはないが、一匹のウミボタル$${^{*10}}$$が出す光はかなり弱そうである。しかし「20cm離れた二匹のウミボタル」では全然判らない。
結局、「ワシントンから東京」という表現しかないことになる。内容は正確で、しかも判り易く表現するのは難しい場合が多いような気がする。
*1 20030314 日計
*2 超文章法(野口悠紀雄):書評
*3 HubbleSite
*4 人工衛星・ハッブル宇宙望遠鏡
*5 Resource Gallery
*6 ハッブル望遠鏡、新しいカメラを搭載予定
*7 Washington, D.C. White House - 東京 皇居 10,914.295786km
*8 日本惑星協会 ハッブル宇宙望遠鏡の修理が完了
*9 札幌時計台 - 東京 皇居 832.656781km
*10 ウミボタルの発光 光を出す生物、ウミボタル
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