20070720 温暖化の説明図(5)
温暖化の説明図$${^{*1}}$$の続き。大気の膜、地球それぞれの熱容量を考慮しないで温度を決めることができるだろうか。
熱容量$${^{*2}}$$を考慮しなくてもよい場合はどういう時か。宇宙に置かれた無限に広がる平板$${^{*3}}$$を考える。仮にこの板の温度が「$${-19\degree C}$$」だとしよう。板の裏表からは「$${-19\degree C}$$」分のエネルギー、即ち「$${1}$$平方メートル当たり$${236W}$$のエネルギー」が放出されている。エネルギーが放出されれば、平板が持っているエネルギーがどんどん減ってしまうのでその温度が下がる。しかし熱容量が定義されていないので、どのように温度が下がるか判らない。はっきりしていることは、最終的には絶対温度$${0}$$度になることだけである。最終的に何度になるかが判っていれば熱容量は考えなくてもいい。逆に最終的にどれだけのエネルギーを放出するかが判れば、この時も熱容量は関係ないだろう。
このどんどん冷えて最終的には絶対温度$${0}$$度$${^{*4}}$$になってしまう平板に平行に同じ様な板を置く。平行に置いた板の温度が何度であっても最終的には絶対温度$${0}$$度に落ち着く。板の間で放射エネルギーのやり取りがあっても最後にはどちらも絶対温度$${0}$$度になる。
次に常に「$${-19\degree C}$$」の平板を考える。常に温度が一定なので放射されるエネルギーも一定で「$${1}$$平方メートル当たり$${236W}$$のエネルギー」になる。この板に平行に温度変化が自由な平板を置く。この板は「$${1}$$平方メートル当たり$${236W}$$のエネルギー」を受け取り温められる。温度は物に蓄えられるエネルギー量に比例する。どれだけのエネルギーで何度になるかが熱容量だから熱容量が決まらないと何度になるか判らない。しかし「$${-19\degree C}$$」より高くならない。「$${-19\degree C}$$」より高くなれば元々の平板から来る放射エネルギーよりも出ていくエネルギーの方が大きくなるので、「$${-19\degree C}$$」より高くはなれない。
では「$${-19\degree C}$$」より低いままでいられるか。ある温度に落ち着くまでは、受け取ったエネルギーの一部は自分の温度を上昇させ、残りは平板の裏表で放出されるエネルギーとなる。そしていつかは温度が落ち着き、「$${-19\degree C}$$」の平板から受け取るエネルギーは一旦吸収して、そのまま吸収した全エネルギーを半分ずつ表裏で放出するようになる。つまり「$${1}$$平方メートル当たり$${236÷2=118W}$$のエネルギー」が放出されるようになる。放射エネルギーはステファン・ボルツマンの式から絶対温度の四乗に比例しているので、放射エネルギーが半分になれば、温度は$${2}$$の四乗根分の$${1}$$になる。「$${-19\degree C}$$」は絶対温度では$${254K}$$なので、これを$${2}$$の四乗根で割ると$${214K}$$になる。これを摂氏に直すと「$${-59\degree C}$$」となる。平板を置くだけで「$${-19℃}$$」から$${40\degree C}$$も下がった。これは熱遮断の原理となっている。
ここで「$${-59\degree C}$$」になった平板から「$${-19\degree C}$$」の平板に放射される「$${1}$$平方メートル当たり$${118W}$$のエネルギー」はどうなるのか。「$${-19\degree C}$$」の平板に吸収されるだけである。常に「$${-19\degree C}$$」と仮定したからそうなる。
では、「$${-19\degree C}$$」の平板の温度が変化すると考えるとどうなるか。戻ってくる「$${1}$$平方メートル当たり$${118W}$$のエネルギー」によって温度が上昇し、それによって平行に置いた平板の温度が上昇し、更に戻りのエネルギーが増える。すると元々あった「$${-19\degree C}$$」の平板の温度が上昇する。これを繰り返して平行に置いた平板が「$${-19\degree C}$$」になった時、その板からは「$${1}$$平方メートル当たり$${236W}$$のエネルギー」が放射され、元々あった平板は「$${-19\degree C}$$」の熱源と平行に置いた平板からの「$${1}$$平方メートル当たり$${236W}$$のエネルギー」で、合計「$${1}$$平方メートル当たり$${236+236=472W}$$のエネルギー」を平行に置いた平板に向かって放射することになる。この時温度は$${302K}$$、摂氏ならば「$${+29\degree C}$$」になる。
平行に置いた平板側が「$${+29\degree C}$$」になれば、その反対側も「$${+29\degree C}$$」になっている。となれば「$${1}$$平方メートル当たり$${472W}$$のエネルギー」を放出していることになる。一枚の平板の時には温度が「$${-19\degree C}$$」で、表裏それぞれ「$${1}$$平方メートル当たり$${236W}$$のエネルギー」の放射だったのが、エネルギーも何も持たない平板をもう一枚平行に置いただけで全体では「$${1}$$平方メートル当たり$${236W}$$のエネルギー」と「$${1}$$平方メートル当たり$${472W}$$のエネルギー」との放射になってしまった。
これはどういうことか。
*1 20070719 温暖化の説明図(4)
*2 熱容量と比熱
*3 二平板間の熱輻射
*4 温度ってなんだろう。