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20000208 CDの寿命

 今から20年ほど前、CD$${^{*1}}$$が巷に出回りはじめた頃、ある噂が事情通の間では囁かれていた。
「CDはレコード$${^{*2}}$$よりも寿命がかなり短い。10年もたない」という噂だった。
 CDにはポリカーボネート$${^{*3}}$$という透明のプラスチックの円盤にデジタル信号となる微小な凹凸$${^{*4}}$$がレコードの溝のように螺旋状に並べてある。レコードの溝は外周から中心に向かって音声信号が記録されているが、CDの場合は内側から外周$${^{*5}}$$に向かって並べられている。
 CDにこれまた微小に絞って細くしたレーザー光線$${^{*6}}$$を当てて凸か凹かを見分けて「0」か「1」かの信号として取り込んで、音に変換する。ポリカーボネートは透明なので凹凸を検出するためにアルミの薄い膜を塗ってレーザー光線がよく反射するようにしてある。
 別にペンキのように塗ったわけではないが、分かり易く言えば水を使わないメッキのような手法$${^{*7}}$$によって塗ってある。アルミの膜が傷つくと凹凸が読めなくなるので保護膜がその上にある。このアルミの膜はCDの何も書いていない面ではなく演奏者や歌手名が書いてある側に塗ってある。CDが銀色をしているのはこのアルミ膜の色が見えているためだ。時々、金色のCDがある。この場合はアルミの代わりに金を使ったCDである。

 ここからが噂の根拠である。ポリカーボネートはわずかながらでも水を吸う。CDラックにきちんと入れておいても空気中の湿気をどんどん吸っていくらしい。するとアルミの膜がポリカーボネートが吸った水分によって錆びてしまい、ついには銀色の光沢がなくなり音が出なくなる、というのだ。
 しかし現在10年以上前のCDを持っているが全く問題なく音が出る。

 一体、あの時の事情通とはなんの事情に通じていたのだろうか。

*1 CDの読み出し原理
*2 レコード針をお探しですか?
*3 pcsyokki3
*4 DVD技術解説 -第2章 再生専用ディスクの物理フォーマット-[2.1 物理規格の設計コンセプト]
*5 CD-R/RWのヒミツ
*6 DVD技術解説 -第2章 再生専用ディスクの物理フォーマット-[2.1 物理規格の設計コンセプト]
*7 Sputtering Method

※更にこの記事を執筆した時から20年近く経過しているが、読み取れなくなったCDはない。

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