20000527 みみず
「蚯蚓鳴く」というのは秋の季語である。私が住んでいる地方$${^{*1}}$$のミミズはうるさいぐらい鳴く。ジーッと高い音で一体何処で鳴いているのか判らない。
音によっては音源の位置が何処にあるか全く判らない場合がある。例えば携帯電話の標準的な着信音は何処でなっているか分かりにくい。自分の後ろで鳴っているのか前で鳴っているのかさえ分からない場合がある。昔の人は何処で鳴いているのか分からないからミミズが鳴いていることにしたのだろう。
音の方向を知る手だて$${^{*2}}$$として二つの方法があるらしい。両耳の音の強さ差からその方向を知る方法と、耳たぶ(耳介)$${^{*3}}$$での音の反射の仕方によって同じ音の高低が微妙に変化する事を利用して方向を推測する方法である。後者の場合$${^{*4}}$$は音の変化の仕方を学習することによって音の方向が分かるようになるのだろう。
しかし耳や頭蓋骨の共鳴現象によってある特定の高さの音の聞こえ方が方向によって全く変化しない場合があるかもしれない。ミミズの声や携帯電話の音の方向が分からないのはこのせいなのだろうか。
かつて本当にミミズが鳴いているのかを確かめに行ったことがある。何処で鳴いているのかその方向が分からないので、近づいて音が大きくなる方向を探しながら草むらの中に入っていく。大きな音を立てると鳴き止んでしまうので、音を立てないように気を付けなければならない。
草の中にバッタに似た虫がいた。確かにこの虫の付近からあのジーッという音が出ていた筈だ。見つけたときは既に鳴き止んでしまったので確証はない。
この虫はクビキリギス$${^{*5}}$$という。キリギリス$${^{*6}}$$の仲間である。物に噛みつくと首が切れても離さないところからこの名前が付いたらしい。とりあえずこのクビキリギスが「蚯蚓鳴く」の正体であると結論づけた。
しかし殆どの文献で実際はケラ$${^{*7}}$$が鳴くとしている。ケラの鳴き声とはどんなものだろうか。土の中で鳴いてあんな大きな音に聞こえるのだろうか。
昔の人はミミズが鳴いていると思っていたが、調べてみるとケラやクビキリギスの鳴き声であった。これとよく似ているのはコノハズク$${^{*8}}$$とブッポウソウ$${^{*9}}$$との関係である。「ブッポーソー」と鳴くのは仏法僧という名の鳥と思われていた。だからその鳥の名前がブッポウソウになっている。だが実際はコノハズクが「ブッポーソー」と鳴いていた。ブッポウソウはギャギャギャと鳴くらしい。
*1 愛知事典
*2 音源定位実験
*3 noisekiso-Youyuland
*4 AViX 3Dはどうして三次元立体音響が可能なのですか?三次元立体音響のからくりを教えてください
*5 クビキリギス
*6 キリギリス
*7 市川の自然 | 虫 | ケラ
*8 コノハズク
*9 ブッポウソウ