ギフトショーの商品コンテスト-審査員の内緒話
コンテストは常に注目の的
ご存知のように様々な業界やメディア、多くの企業イベントでコンテストは開催されている。消費財関連でも公的団体主催の大規模なものから、エンドユーザー主体のファンの人気投票的な身近なものまでがあり、常に話題を呼ぶ。
国内最大規模の来場者22万人、出展社2700社を誇る見本市「東京インターナショナル・ギフト・ショー(以下ギフト・ショー)」でも、毎回(春秋開催)行われているのが、各商品コンテスト。
「新製品」「輸入品」「女性のハートをキャッチするギフトグッズ」などのカテゴリーごとの入賞とそれらを含む全出品商品からグランプリが選ばれる。
ギフトショーにともなう長い歴史(95回!約50年)があり、その受賞商品の傾向が業界に与える影響は小さくない。
筆者は2012年から商品コンテスト(新製品、輸入品他)で審査員を務めているが、回を追うごとに出品者の熱意と来場バイヤーの関心が増していると実感する。審査員は、来場者がアンケート投票した得票順位をもとに受賞の商品を最終審査する役目。
本記事は2023年3月執筆繊研新聞に掲載
最新24年2月のコンテスト結果はこちら
絶対! バイヤーの選択眼
来場者(小売、卸バイヤーなど)がコンテストコーナーで実物を見てアンケート投票した結果をランキング。上位の商品から受賞するシステムだ。
ランキングを見ていつも感じるのが、投票したバイヤー達の目の確かさだ。
バイヤーの投票基準は、高所大所から見て、世の中の趨勢を占い、将来の社会に与える影響を考える……などでは決してなく、「はじめて見た!新鮮」「自店の売場で扱いたい」「このデザインはうちの売れ筋!」などの素直な現場の商人ならではの直感。結果、今と今後の売場品揃をダイレクトに反映したリアルな状況を表すランキングになっている。
展示されているたくさん(数百点)のエントリー商品の中から、短時間で数点を選び投票することは難しいことだが、スピーディに選んでいる (ように見える)来場バイヤーの判断力には目を見張るものがある。
日本の小売店売場の縮図
そもそもが雑貨、ギフトの概念が幅広く、クリップ、モバイルバッテリーから自転車、キャンプテントまでと幅広い分野の商品が出品(出展)されているのが本見本市。そして来場するバイヤーは老舗百貨店、大手GMS(総合スーパー)、著名セレクトショップ、全国展開チェーン店から家族経営の商店街のブティックや化粧品店、ネットショップまでと大小様々な規模、多様なテーマ、業態の店舗からやってきている。
結果、得票は特定の商品に過度に集中せずに幅広く多くの商品に分散され、票数差は少ない。ランクインしない商品にも可能性があるものがたくさんあることは言うまでもない。
迫力とアイディア
そんななか僅差で受賞するものの傾向は、大きくふたつ。まずサイズ、デザインなどにインパクトのある商品。コンテストコーナーのたくさんの商品の中でも、“わかりやすく”存在感を発揮する、キャッチーな商品だ。売場で来店客の目を奪う商品が、たくさんの販売機会をつくるのと同じ。
一方、知恵やアイディア、新技術が盛り込まれた商品も得票が多い。消費者が潜在的に「あったらいいな」と思っているウォンツ(Wants) を感じさせるもの。シーズ(Seeds:企業側の提案や新技術、素材) を活かした商品、細やかな気遣いがある商品だ。
受賞商品は
今年2月会期の受賞商品の一部を紹介する。
グランプリは「ステンドグラスシール」。無地、単色のシンプル・ミニマルなデザインが多い現在のインテリア空間のアクセントとして。精緻で色彩ゆたかな絵柄が印象的。
「LEDライティングメッセージボード」手書きの伝言文やイラストが光る透明ボード。和める間接照明としても使える(新製品分野大賞)。
コロナ禍により変化したライフスタイルの中で子供たちに楽しく、手洗い&手拭きを習慣化させる「おてふきぬいぐるみ」(女性のハートをキャッチするギフトグッズ分野大賞)。
「ミニ焚火キット」は小さな焚火体験ができるスキレット、消化剤などまで含まれた入門セット(女性のハートをキャッチするギフトグッズ分野審査員特別賞)。
「本屋大賞」が書店員の選ぶ本の大賞なら、このコンテストは多数の小売店バイヤーが選ぶ、ギフト大賞、雑貨大賞とでも言えるだろう。
了
著者
富本雅人 とみもと・まさと
雑貨コンサルタント®︎。デザイナー、雑貨企画、ロフト本部バイヤーを経て94年から雑貨ビジネスコンサルティング&プロデュースを行う。個人店の新規開業サポートから上場小売企業の雑貨売場の監修、老舗商品企業の商品開発プロデュースまで「雑貨」を核とした業務を行なっている。講座「雑貨の学校®」主宰講師。著作『雑貨の教科書』シリーズ(SBクリエイティブ刊)、『雑貨力®』(ビジネスガイド社刊)ほか。
2012年よりインターナショナル・ギフト・ショー東京の商品コンテストの審査員をつとめる。
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