小さな小さな雑貨屋が、とあるアール・ブリュット画家の素敵さを拡げていく話
「この間ウチで展示した人の絵がめちゃくちゃ良いんだけど、多分好きだから見てよ。ほらこれ、いいでしょ。」
「え!いいやん、いいやん〜。かわいい!」
「全部、マッキーなんだってさ。」
「え。いや色遣い良すぎやん...嫉妬するわ。」
「これね、もっとたくさんの人に知ってもらいたい。でも本人はプロモーションとかには我関せずだから...。ねえ、一緒にやらない?」
「なにそれ...!面白そうやから、やる!」
そんな会話が交わされたのは、2021年1月半ばのことでした。
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魚嶋ユウスケさんの絵と『魚嶋🐟プロジェクト』メンバーとの関わりは、京都にある小さな小さな雑貨屋が、ユニークな商品に出会ったことが始まり。京都・出町柳の少し北、高野川のほとりにあるシェアスペース『リバーサイドカフェ』管理人かつ同スペース内の『ブリッジ雑貨店』店主(@zakka_bridge)が、かわいい動物モチーフの陶器の箸置きを買い付けたのです。
このクスっと笑える小さな箸おきの図案に、魚嶋さん原画のモチーフが使われています。この商品販売が魚嶋さんの絵の展示につながり、そこからまたゆるゆると周囲をまきこんで、京都在住の工芸作家さんやクリエイターとのコラボレーションに繋がるプロジェクトが始まることになりました。
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もう少し時間を遡ると...。
リバーサイドカフェで、もともと日替わり店長をしていた女性がブリッジ雑貨店を訪ねてきた時、とても素敵なブローチをつけていました。雑貨屋店長の性で、食い気味に「なにこれカワイイ!どこで買ったん?」と聞いたところ、返ってきた答えは、
「バイト先のテンダーハウスってとこで、作ってるんです。」
この女性の働いていた障害者支援施設『テンダーハウス』には陶工班があり、そこではブローチだけではなく湯呑みやプレート、一輪挿しなどをオリジナルデザインで作っています。
とにかくカワイイ...取り扱いたい...。同じような大きさで、ウチのオリジナル雑貨を作ってもらえないかな?
そんな想いでテンダーハウスを訪問し、衝撃の出会いをすることになります。力強い線でモチーフを繰り返す独特の画風。色遣いが強烈な絵。その原画の作者が魚嶋さんでした。
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初めての取引先訪問...という緊張を解きほぐすように、にこにこ出迎える利用者の皆さんと施設スタッフの方々。嬉しくなっていろいろお話ししているうちに、「こんな感じで描いているんですよ」と原画を色々出してきてくれました。個性が光る原画の中でも際立っていたのが、あまりにも鮮やかな色彩のイラストでした。
マッキーでまんべんなく塗り込まれたA4用紙。よく見るとそれはコピー用紙の裏紙で、堅いお知らせ文書の裏にポップなフォルムの動物がたくさん描かれています。なんという魅力的なギャップ!!
作品の描かれた紙を次々と夢中でめくって、気づいたら指の油分を全部紙に持っていかれて手がカサカサ。そんなこと気にならないくらいの高揚感。これは、すごい。
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箸おきの制作が進んでいっても、原画の強い印象が頭に残っており、「これ、どうにかして世に出せないだろうか?」とモヤモヤ考え続ける日々。
箸おきが雑貨店に並ぶと、テンダーハウスのスタッフさんが商品が並んでいるところを見がてら、リバーサイドカフェに足を運んでくださることも。愛あるスタッフさんたちだなと感じてますます何か関わりたい気持ちに。
そこで、「わたし、魚嶋さんの描く絵がとても好きなんですけど、カフェで展示をしてみませんか。」と提案。
展示 "Uoshima Yusuke Painting Exhibition" が実現しました。
結果は上々。キース・ヘリング好きのお客さんをはじめ、絵を買う習慣がないという方まで、鮮やかな色とユニークに縁取られたモチーフに惹かれた方々が購入してくださいました。
テンダーハウスの関係者の方々もたくさん展示を見に来てくれました。
そして、「こんなに喜んで絵を買ってくださる方がいるなんて」と魚嶋さんのお母さまが喜んでいたのが印象的な展示の締めくくりとなりました。
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実は、展示中から頭に浮かんでいたのが「グッズを作ったらかわいいんじゃない?」という構想でした。ユニークで見たことがないようなフォルムの動物の柄のポーチや便箋やスマホケース...考えただけでも雑貨屋の血が騒ぎます。
知り合いにはものづくりに関わる人も多いし、魚嶋さんの絵からインスピレーションを受けて、また新しい作品が生まれたら、絶対に面白い!
そこから、魚嶋さんの絵の良さを分かってくれそうな大学の後輩を巻き込み、アート好きな友人を巻き込み、ゆっくりとブリッジ雑貨店プロデュース『魚嶋🐟プロジェクト』がはじまりました。
現在、プロジェクトはブリッジ雑貨店と、フォトグラファー・翻訳者のミズカミ(@s_kokishin)の2人が主に運営しています。
ミズカミさんは大学の後輩で、たまたまお茶をしているときに魚嶋さんの絵の面白さを話したら(まさに魚のように)釣り上げられたプランニング・ビジュアル制作担当です。
冒頭の会話は、この2人のものでしたー。
魚嶋さんの絵をエネルギー源のようにして、そこから有機的に、自発的に、派生する様々なアイデア。ものづくりを愛する人たちの柔らかな感性で大事に培われたグッズを販売したり、展示につなげたりしていく予定です。
魚嶋さん本人の生み出すものが、そのほかのところで様々な人の心を動かし、その関係人口内での交流が生まれる...そんな空気感を大事にしていきたいです。
どうぞこのプロジェクトを見守ってください。もしよければ、何らかの形で参加してください。