水面に浮かぶ古城 アイリーン・ドナン城【スコットランド紀行 Day7】
B&Bの朝食会場はホテルのそれと比べて宿泊客同士の距離が近く、居合わせた者同士で会話が盛り上がることも多い。
そして時はラグビーワールドカップの日本開催が目前に迫る2019年9月。
そんな中で日本からやってきた私には当然そういった話題を投げかけられることが多かった。
ラグビーにそこまで興味のなかった私は、スコットランドと日本が同組であることをこの旅行中に知った。
しかし盛り上がりに水をさすこともはばかられるので、
「あーそれねー、スコットランドと同組だから日本は相当厳しいですねー」などと、当然知ってましたけど?という顔をしてやり過ごしていた。
さて、7日目の今日は東部から西部へと一気に移動する。西に進路をとってアイリーン・ドナン城を訪れたのち、少し南下してハイランド地方第二の都市であるフォート・ウィリアムを目指す。前日に続いて250km以上の大移動日だ。
グレンオード蒸留所
東の海岸線に唐突に現れる人魚を一瞥したら、後はいよいよ西へ向かうのみである。
南西に約1時間。まず訪れたのはグレンオード蒸留所だ。
グレンオード蒸留所(Glen Ord Distillery)は、1838年にミュアー・オブ・オードの町にて創業された蒸留所であり、地域的にはハイランドに属する。
年間1000万リットル生産されているというグレンオードのウイスキー、あまり耳にしたことが無いかもしれない。それもそのはず、ここで造られるオフィシャルのウイスキーはグレンオードと言う名前で販売されていないのだ。
ではなんという名前で発売されているか?
シングルトン(The Singleton)である。
なぜ他の蒸留所のように己の蒸留所名を全面に出さないのか?
それには親会社の戦略があるようだ。
グレンオード蒸留所を所有するのは世界的酒造企業であるディアジオ(Diageo)社である。ディアジオ社は28ものスコッチウイスキー蒸留所を所有しており、そこにはこれまで訪れてきたロイヤルロッホナガーやクラガンモア、クライヌリッシュといった蒸留所も含まれている。
それらの蒸留所から、ジョニーウォーカーやホワイトホースといった誰もが知るブレンデッドウイスキーを産み出している一方で、シングルモルトウイスキーとしてはグレンリベットやグレンフィディック、マッカランといった他社の後塵を拝しているのが現状である。
そこで、ディアジオは「シングルトン」を複数の蒸留所をまたいだ1つのブランドとして成長させ、他のシングルモルトの巨人たちに挑もうとしているというわけだ。
というわけでこのシングルトンというブランド名称はグレンオードの他、ダフタウン蒸留所、グレンデュラン蒸留所のシングルモルトでも使用されており、ヨーロッパ・アジア・アメリカと市場ごとに出し分けると言う戦略がとられている。
現在日本で販売されているシングルトンはダフタウンのものであるが、数年前までグレンオードのものが流通していたので、飲んだことがある人もいるだろう。
さて、そんなグレンオード蒸留所ではツアー見学などは行わなかったが、この蒸留所では原料であるモルトの仕込みから一貫して自社工場内ですべての製造を行っている希少な蒸留所である。またビジターセンターも充実しており、ビジターセンター内をうろつくだけでも様々な展示を見ることが可能だ。
スーツケースの容量を考えると、購入できるウイスキーのフルボトルは残り1本が限界だ。グレンモーレンジィの限定ボトルに手が出せなかった私は、ここグレンオードで最後の1本を入手することにした。
シングルトンのボトルは平べったい形状をしていて収納しやすいことも私にとっては幸いであった。
スコットランド大横断
横断を続けよう。
やはりスコットランドの魅力の一つといえば自然である。
ただ田舎道を突っ切って終わるのではもったいない。
駐車場に車を停めては少し森の中を歩いて滝を眺める。
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