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イングランドへの鍵・ドーバー

今回取り上げるのは、多くの人が一度は耳にしたことがある一方で、何があるのかはさほど知られていない街、イングランドのドーバー。

そこはイングランドへの鍵とも呼ばれ、この国を巡る歴史を感じることのできる場所である。

ドーバー(Dover)はイングランド南東部ケント州に位置する人口約3万人の街である。ドーバー海峡の名で知られるように、ヨーロッパ大陸との距離が近く、少なくとも青銅器時代には舟での交易があったことがわかっている。
大陸との距離が近いということは軍事的にも重要な場所であることを意味しており、ノルマン・コンクエストやナポレオン戦争、第二次世界大戦などで重要な役割を果たしている。


ドーバーには大きく分けるならば2つの見所がある。
まず1つ目の姿は、海岸から陸を見ると髄所に感じられる。

海岸沿いの道を歩いて、崖のほうを目指していこう。

1994年のドーバー海峡トンネルおよびユーロスターの開通によって、旅客運送の面で港の果たす役割は小さくなっている。
しかしながら、貨物運送等ではまだまだイギリスを代表する港湾都市としての存在感を放っており海岸沿いを歩けば、そのことがよくわかる。

港は東西2地区に分かれており、ピーク時には10分に1隻のペースで船舶の着岸・離岸が行われているということで、その需要の高さが見て取れる。
また、大陸との交通ルールの違いから、至る所に「左側通行」と注意を喚起する看板があるのも国際港らしい。

そこからさらに歩みを進めて都合30分ほど歩くと、目当ての崖に行き当たる。

白亜の断崖・ホワイトクリフだ。

長きに渡って堆積した白亜系チョークが地殻変動と隆起、そして波による浸食で断崖となり高さ100mに及ぶ白い断崖となっているのである。

同じような白い崖としては、ドーバーから西に100㎞弱離れたセブンシスターズが有名である。

訪れた日の天候に左右されている部分も多少あると思われるが、白さの度合いでいえばセブンシスターズに軍配が上がるだろう。
ホワイトクリフは、黒い燧石が混ざっており、白一色!というにはやや物足りない印象を受けてしまうのだ。

しかしながら、かつてドーバー海峡を船で渡りイギリスを目指した多くの人々ががイギリスで最初に目にする光景がこの白い断崖だったのだ、と思うと感慨深いものを感じずにはいられない。

ブリテン島の昔の呼び名であり、イギリス人あるいは国としてのイギリスの異名としてしばしば使われるアルビオン(Albion)はラテン語で「白い」を意味し、これは大陸からブリテン島に上陸する際、最初に目にするこのホワイトクリフの白さから来ていると言われている

ドーバー2つ目の名所は、町中からも存在感を感じる巨大な城である。

ホワイトクリフの遊歩道の手前に位置するのが、ウインザー城と並びイングランド最大の城砦・ドーヴァー城だ。

塔をくぐると主たる建物が姿を現す。

少なくともローマ時代にはこの場所に城砦があったことが分かっており、外敵の侵攻を受けやすいドーバーという土地に位置する地理的重要性から「イングランドへの鍵」と呼ばれている。その言葉通り中世ではフランス、世界大戦ではドイツといった様々な外敵から国を守る拠点として存在感を示していたのである。

早速中へ。
石造りで無骨な外観ではあるものの、カッチリした造形が個人的にポイントが高い。

歴史的に重要な防衛拠点なだけあって、早速衛兵が整列していた。

しかし彼らはOBの退役軍人たちだったのだろうか、なんとなくその場全体が緩い雰囲気をまとっていた。
平和っていいなぁ。
そんな風に思われた。

城の建物内部も見学可能であり、城塞として活用されていた時代の展示が行われている。

そして、いわゆる天守閣に相当するgreat towerは屋上に出ることができる。
階段を昇って行こう。

屋上からは街を一望できる。

また、反対側を見ると先ほどの ゆる兵団が坂を上がっているのが見えるが、その向こう、教会右側に隣接しているひときわ古そうな建物が現在世界にわずか3基しか現存していないローマ帝国時代の灯台だ。

そしてその向こうにはドーバー海峡が。

海峡の向こう、33㎞先にはフランス側の街・カレーがある。
晴れた日には大陸側まで見通すことができるようだが、残念ながらこの日は雲の向こうであった。
心で大陸を感じるしかないか。
そう思っていると、私のスマホが震えた。

EEはイギリスの大手通信キャリア

どうやら長く共にいすぎて私よりも外国に敏感になっていたらしい私のスマホが、フランスの電波を感じ取ってしまったらしい。
実際ドーバーではよくあることらしいのだが、ちゃんとそのお約束を実行してくれるあたり、流石は私の相棒だと思わされた。

ドーバーのマグネットがこちら。

ドーバー海峡にそびえる白い崖の上にはドーバー城が鎮座し、海をフェリーが進む。ドーバーの特長をしっかりと詰め込んだ風景がなぜかカバンに描かれた逸品だ。崖が多少黒いところも素直でよろしい。
あちこちの店を回ってマグネットを見つけられず、あきらめかけたころに入った日用品店のような店でようやく見つけた逸品だ。

バッグに景色が描かれているパターンはほかにあまり見た記憶がないが、飾るときに取っ手部分が場所を取ることを除けば特徴的で良いと思う。


現在においては旅行者にとって以前ほどの重要性を失って久しいとはいえ、これまでの悠久の歴史の中で、イギリスに向かうもの・攻めようとするもの
、あるいはイギリスを去るものを見送るもの・国を守るもの、それらが皆目にしたであろう景色を眺めて、この国の歴史を感じるのも悪くない体験ではないだろうか。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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