Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwyllllantysiliogogogoch
猫がキーボードの上をのたうち回ったわけではない。
これから取り上げる場所の名前だ。
noteのCXO、深津貴之さんの記事によると、note記事を良いタイトルにするポイントととして、
・15-25文字で
・読みやすさを意識しよう
・公開の前に音読をしよう
などとある。
お作法からすると、読みにくく長ったらしい今回のタイトルはあまり良いものではないのかもしれない。ただ、この記事で一番伝えたいことはこれなのだ。
公開の前に音読はした。過去の特訓のおかげで私はスラっと読めたから良しとしよう。
そんなわけで今回は、イギリス・ウェールズ北部にある世界で一番長い名前を冠する駅およびその一帯について取り上げたい。
Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwyllllantysiliogogogochはこんなところ
Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwyllllantysiliogogogochはイギリスを構成する4つの国の一つであるウェールズの北部、アングルシー島にある村だ。人口は3,000人程度と小さな村であるが、新石器時代にはこの地に既に人が住んでいた事がわかっている。
とは言っても、もちろん昔からこのような長ったらしい名前だったわけではない。1869年にLlanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwyllllantysiliogogogochに改名されたそうであるが、その理由は「駅をイギリスで最も長い名前にするため」という話題作りが目的だったようだ。
その甲斐あってか、現在は年間約20万人が訪れる観光地となっている。
なお、このLlanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwyllllantysiliogogogochという58文字の地名、駅名としては世界最長。地名としても世界で2番めの長さを誇っている。地名のNo.1はニュージーランドにあるTaumatawhakatangihangakoauauotamateaturipukakapikimaungahoronukupokaiwhenuakitanatahu(85文字)だそうだ。世の中上には上がいるものだ。
Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwyllllantysiliogogogochを読んでみよう
皆さんの「いや読めねぇよ」という声に応えよう。Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwyllllantysiliogogogochをカタカナに起こすとすれば、「スランヴァイルプールグィンギルゴーゲリッヒウェルンドゥランヴルスランティスィリオゴゴゴッ」という感じだ。
「いや覚えられねぇよ」という方のために、Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwyllllantysiliogogogochを歌って覚える唱歌があるので、是非観て覚えてほしい。こういうのは口に出して覚えるのが一番だ。
お察しの通りこの地名は英語ではない。ウェールズ語だ。
ウェールズ語はウェールズの伝統的な言葉であるが、同じグレートブリテン島内でどうしてこれほどまでに違うのだろうというくらいにスペルも発音も異なった言語である。
そしてLlanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwyllllantysiliogogogochの意味は、「赤い洞窟の聖ティシリオ教会のそばの激しい渦巻きの近くの白いハシバミの森の泉のほとりにある聖マリア教会」だ。
ウェールズ語の勉強も兼ねて、単語レベルに分解してみよう。
llan=教会
fair=(聖母)マリア
pwll = 泉
gwyn = 白
gyll = ハシバミの木々
go = 下
ger = 隣の
( y = 定冠詞 )
chwyrn = 激しい
drobwll = 渦巻
tysilio = 聖ティシリオ(ウェールズの聖人)
( g = 子音接中辞)
ogo = 洞窟
goch = 赤い
なんと、このLlanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwyllllantysiliogogogochを覚えるだけで同時に12個の単語をマスターしたことになる。なんとお得な地名ではないか。最後のゴゴゴッも、別に噛んでるわけではなく「赤い洞窟」というれっきとしたウェールズ語なのだ。
なお、あまりにも長すぎるので通常Llanfairpwll(スランヴァイルプール)と略されるそうだ。
Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwyllllantysiliogogogochへのアクセス
Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwyllllantysiliogogogochへは、車以外ならば電車のアクセスになるだろう。
ウェールズ南部の首都カーディフや、イングランド第二の都市バーミンガムなどから、アングルシー島のさらに先・アイルランドへの船が出るホーリーヘッドへ向かう電車がLlanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwyllllantysiliogogogochを通る。
だが注意が必要なのは、Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwyllllantysiliogogogoch駅はリクエストストップという仕組みになっていて、乗車する場合はホームから運転手に合図を、降車する場合は車掌に予め降りる旨を伝えておかなければ駅には止まってくれないということだ。
この動画の先頭のように、車掌が回ってきた際に声をかける必要があるそうだ。ちゃんと「Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwyllllantysiliogogogochで降ります!」と淀みなく言えるようになっておこう。
※注記
2021年4月現在、Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwyllllantysiliogogogoch駅には電車が停まらないらしい。廃線になったとかではなく、コロナの影響だそうだ。
なんでも、車内のソーシャルディスタンスを保つために現在2ドアの長い車両でしか運行をしていないそうなのだが、Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwyllllantysiliogogogoch駅のホームは短すぎて2ドアの電車が停まれないから停車しない、ということらしい。
名前は長すぎるのにホームは短かすぎた。
なんとも皮肉なことだ。
早く事態が収束してまたこの長い駅名をアナウンスする日が戻ってきてほしいものだ。
Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwyllllantysiliogogogoch駅
19世紀に仕掛けられた町おこしのための作戦に、150年の時を経てホイホイと釣られた私は、北ウェールズを旅する中でこの地を訪れた。
観光名所であるだけのことはあり、無人駅には似つかわしくない大きな駐車場があった。
そしてLlanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwyllllantysiliogogogoch駅舎である。その名を照らすのも一苦労だろう。現在は無人駅なので、この駅舎内に入ることは出来ない。
駅舎横の出入り口から入ろう。Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwyllllantysiliogogogoch駅のホームは特段変哲のない、地方の小さなありふれた駅という出で立ちだ。
しかし、やはり駅名標が異彩を放つ。
私のカメラでは、線路際ギリギリまで下がってやっと画角に収めることができた。
反対側ホームから撮るか、おとなしく斜めから撮るのが良さそうだ。
そして観光名所らしく、Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwylllantysiliogogogoch駅の横にはお土産屋があった。
ここでは、Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwyllllantysiliogogogoch駅の入場券やそれを模したタオルなど、ご当地おみやげの購入が可能だ。
入場券と言っても、正式なものというよりはただのお土産で、実際のところ無人駅かつ改札もないので、入る上で購入しなければいけないというものではない。
なお、東京とLlanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwyllllantysiliogogogochとは5923マイル離れているようだ。
時間が許せば、Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwyllllantysiliogogogochの由来である「激しい渦巻」や「白いハシバミの木々」も探し出して見てみたかったのであるが、聖マリア教会にしか行くことが出来なかったのが残念だ。
聖マリア教会はシンプルな教会であった。きっと施工主も、このこじんまりとした教会が世界一の名前に関連することになるとは思いもよらなかっただろう。
Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwyllllantysiliogogogoch以外の北ウェールズ名所
なにも北ウェールズには名所がLlanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwyllllantysiliogogogochしかないわけではない。
北ウェールズにはグウィネズのエドワード1世の城郭と市壁という複数の城からなる世界遺産がある。
8つの塔を持つ要塞、コンウィ城に、
二重の城壁を持つ堅牢なボーマリス城、
そしてプリンス・オブ・ウェールズこと英チャールズ皇太子が叙位式典を行ったこと、および天空の城ラピュタで、シータが閉じ込められた城のモデルとして公式に参考にされた言うことで知られているカナーヴォン城などがある。
その他、作家ルイス・キャロルが不思議の国のアリスの構想を練ったとも、舞台のモデルとなったとも言われる海辺の街・スランディドゥノも訪れたい場所の一つだ。
詳細はウェールズの観光局が公式に出している以下のガイドがあるので参考になるだろう。
https://www.gonorthwales.co.uk/dbimgs/GONW-Japanese-Brochure.pdf
Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwyllllantysiliogogogochのマグネット
Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwyllllantysiliogogogochのマグネットがこちら。
普段私が買っているような手塗り3D系のものではないが、Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwyllllantysiliogogogochの駅標をかたどった超横長マグネットだ。
そろそろこのLlanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwyllllantysiliogogogochという名前を覚えていただけた頃だろうか。
今回の記事で、この長ったらしいLlanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwyllllantysiliogogogochという単語を30回以上も書き連ねてしまった。ひょっとしたら1つくらい書き間違えをしているかもしれない。
北ウェールズは最後に取り上げたような名城や、豊かな自然などが大きな魅力となっているが、もしこの地域を訪れることがあれば、そういえばLlanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwyllllantysiliogogogochとかいう駅があったなと思いだして、足を伸ばしてみてほしい。何かの機会で話のタネになるだろう。
読みづらい記事を最後まで辛抱強くご覧いただきありがとうございました。
次回は、小人が住む街を取り上げられればと思います。