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北ウェールズ名城探訪・前編

連合王国イギリスを構成する1つの国でありながら、あまり日本では知られていない国、ウェールズ。
そこは単位面積あたりの城の数でヨーロッパ一を誇り、多くの名城を抱える城の宝庫である。
今回は、中でも北ウェールズに位置する名城について取り上げたい。


ウェールズについて

ウェールズ(Wales)はグレートブリテン島南西部に位置する国であり、イングランド・スコットランド・北アイルランドとともにイギリス(グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国)を構成している。

ウェールズの歴史は、1258年に成立したウェールズ公国に遡る。
しかし、程なくしてイングランドからの圧力によって支配下に置かれることとなり、1282年にイングランド王エドワード1世の息子であるエドワード2世がプリンス・オブ・ウェールズとしてウェールズの統治者となる。
以後、イングランドの皇太子はプリンス・オブ・ウェールズを名乗ることとなり、現在のチャールズ皇太子まで引き継がれている。

海辺の街・スランディドゥノ

祝日のため、いつもより長い週末に北ウェールズを旅することを決めた私が、最初に向かった街がスランディドゥノであった。

街へ向かう道すがら、左手に立派な城が見えてきた。
後で調べた限りはグリッチ城(Gwrych Castle)だと思われる。

出典:Wales Online

ガイドブックには載っておらず、存在を知らなかったがその立派な見た目に「なんか良さそう。帰り寄れたら寄るかー」と思っていたが、結局立ち寄ることはできなかった。
14-15世紀頃のオリジナルの建物に対して、19世紀初頭に大規模に改築されてできた城のようで、早速次回への申し送り事項ができてしまうスタートとなった。

そんな紆余曲折を経て、たどり着いたのがスランディドゥノである。
スランディドゥノ(Llandudno)は、ウェールズ北岸に位置する人口約2万人程度の街である。
集落としての歴史は石器時代に遡るが、13世紀にエドワード1世が司教に譲渡した荘園(公的支配を受けない私有地)となって以降特に発展し、現在では海辺の保養地として知られている。

早速海辺へ。湾曲した海岸線が美しい。
海岸沿いのリゾート地ではあるが、砂浜ではなくて砂利がメインだ。

そして、イギリスの海岸リゾート地のご多分に漏れず、ピア(桟橋)が存在する。

一般的な船を停泊させることを目的としたものではなく、純粋な観光施設として海に突き出した桟橋は、イギリスの海岸リゾート特有の施設であり、なかなか奥が深い施設であるようだ。

桟橋と言えば特に、イングランド南部の街・ブライトンのものが有名であるが、スランディドゥノの桟橋も全長700mとウェールズ最長を誇り、その先には遊具施設や飲食店が並び、散策を楽しむことができる。

海岸なので当然と言えば当然だが、風が強く海鳥が大変多い。
売店でなにか食べ物を買っても良いが、油断しているとさらわれる危険性と隣合わせである。

このスランディドゥノには城はない。
それでもこの街を拠点としたのは、観光資源が豊富だからである。
特に有名なものが、グレート・オームと呼ばれる石灰岩でできた岬だ。

頂上へ上っての眺めを楽しむべく、トラムの駅へと向かう。

1902年創業と歴史あるレトロなトラムに乗っていざ頂上へ。

家々の間をぬって進む。

途中一度乗り換えて20分ほどで頂上へ。
当日は生憎の曇り空であったが、雲の切れ間から差し込む光がどこか幻想的だ。

山頂では青銅器時代からの歴史を持つ、孔雀石が取れたという鉱山がある他、化石も見つかるそうだ。

また、スランディドゥノは作家ルイス・キャロルが休暇を過ごしたことで知られており、「ふしぎの国のアリス」の構想はこの街で練られたとされている。

街の至る所にキャラクターの像が建っており、ファンには垂涎の聖地と言えるだろう。

祝日を含めた3連休だったこともあってか、街中には遊具が並び多くの家族連れで賑わっていた。

城壁の街・コンウィ

スランディドゥノで夜を明かし、次に向かったのが隣町のコンウィだ。

コンウィ(Conwy)は人口約4000人程度の小さな町であるが、13世紀後半にエドワード1世によって築かれたコンウィ城を中心として、城壁に囲まれており、「グウィネズのエドワード1世の城郭と市壁」として世界遺産を構成する4つの城のうちの1つである。

早速街のシンボルであるコンウィ城へ。

やる気のない衛兵を横目に中に入っていこう。

17世紀頃には廃墟になったと言われているが、それでも8つの塔が保存状態よく残っており、当時の様子を窺い知ることができる。

18世紀の終わりごろにはすでに城の遺構としての美しさは知られるところになっていたようで、多くの画家の被写体となったそうだ。
それもあって、19世紀にはコンウィへのアクセス向上のために吊り橋や鉄道橋が建設されて旅行者も増加したようだ。

それらの橋は城の直ぐ側を通っている。

またえらいところに線路を引いたものだ。
そのおかげで、コンウィに電車でアクセスすると、「城郭都市に来た」感があって大変良い。

時間があれば城の他にも、街を囲む城壁の周りも歩いてみたい。

城壁の中に小さな家々が立ち並ぶ。
ここコンウィは世界遺産であるとともに、日本旅行業協会(JATA)が選ぶ「ヨーロッパの美しい村30選」にイギリスでは唯一選出されているのだ。

散策の途中。壁に謎のサインを発見した。

左はいいとして、右は一体何なのだろう。
左のスリップ注意のほうが物理的ダメージが大きそうなのに、それよりも危険を示す色使いだ。
その割には「はわー、やっちゃいましたぁ〜 ><」と言わんばかりの表情である。今一つ緊迫感が感じられない。

しばらく城壁を歩き、謎は明かされた。

Please let your eyes adjust to the darkness
(暗闇に目を慣らしましょう)

訪問の際には十分に気をつけられたい。
あとこの人は少々滑りすぎではないだろうか。

本日のマグネット

本日のマグネットがこちら。

スランディドゥノは使いまわし感があるが海辺の風景が、コンウィは川沿いに立つ城が描かれている。

なお、右側に目立つ赤い建物はイギリスで一番小さい家である。

19世紀に建てられたこの家は、床面積がわずか5.6平米。2階建てながら高さわずか3.09mとイギリス最小の家としてギネスブックにも登録されているのだ。
城壁から見るとその小ささが際立って見える。
最後に住んでいた住人は身長190cmの漁師だったそうで、さぞ窮屈な暮らしをしていたのだろう。

現在は観光スポットとして中にはいることができるが、ソーシャルディスタンスがどうのこうのとか関係なく広さの問題で1組づつしか入ることができないので、概ね行列ができている。

こうしてコンウィの街を後にし、世界遺産を構成する他の2つの城に向かったのであった。

後編に続く。


最後までご覧いただきありがとうございました。
次回も北ウェールズの名城探訪です。


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zak
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