【欲望の液瓶】
静かな町に、突如として一人の謎めいた男が現れました。彼は人々に対して「一つだけ願いを叶えることができる」と言い、自身が持っている小瓶を差し出します。その小瓶には謎めいた液体が詰まっていて、それを飲むことで願いが叶うというのです。
最初、人々は彼の言葉を半信半疑で受け止めました。しかし、ある老婆が小瓶の液体を飲んだ瞬間、彼女の願い「若返りたい」が叶い、一瞬にして若々しい女性に変わりました。だが同時に、彼女の孫娘の姿が老婆の体に入り込んでしまいました。
次に、町の学校の先生が「生徒たちに愛されるようになりたい」と願いを叶えたところ、生徒たちの間で先生への熱烈な慕情が芽生え、それが原因で学校中に奇妙な争いが生じました。
さらに、町の警察署長が「犯罪がなくなるように」と願いを叶えたところ、町は不気味なほどに静かになり、人々の間には微妙な不安感が広がり始めました。
それぞれの願いが文字通りに叶った結果、町は次第に混乱の渦に巻き込まれました。しかし、人々は謎の男とその小瓶の真意を解き明かそうと奮闘します。小瓶の力を無くすための願いも試みますが、それによって町の混乱は更に悪化しました。
ついに、謎の男は「小瓶は願いを叶えるだけで、それが幸せをもたらすとは限らない。真の幸せは、それぞれが自分で見つけるものだ」と語り、町を去りました。だが、その言葉は混乱の渦中にある町の人々には届かず、町は願いによる混乱から逃れられないままとなりました。
人々が遺されたのは、ただ混乱だけではありませんでした。願いが叶うという幸せとは一体何だったのか、その意味を考え続けることとなったのです。
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