財前ゴボウ

SF作品に魅了された作家です。 未来の可能性や想像力をテーマにした短編SFを執筆してい…

財前ゴボウ

SF作品に魅了された作家です。 未来の可能性や想像力をテーマにした短編SFを執筆しています。人間の心と技術の交錯する世界を描きながら、読者に響く物語を綴ります。歯磨き中や就寝前にどうぞ

最近の記事

【消えた夏の花火】

昔から伝わる古い伝説によれば、この海辺の漁村では、夏の夜に海岸で花火を楽しむことは禁忌とされていました。伝説によれば、夏の夜に花火を見ると、海の深淵から恐ろしい存在が現れると言われていました。 それでも、今回の花火大会は、村の新たな世代が過去の伝説を挑戦しようとした結果として開催されました。新たな世代は、伝説を信じずに花火の美しい光と音を楽しむことを決意し、その結果、驚きと恐怖が彼らを待ち受けることになったのです。 暑い夏の夜、風が涼やかに吹き、星々が輝いています。人々は

    • 【夏の悲劇】

      ある炎天下の日、緑に溢れるジョージの家に、忘れられない客が訪れました。それは、木々の間から大音量で鳴き声をあげるセミでした。 通常ならばジョージの家族は、この季節、窓を締め切り、エアコンで過ごすのが常。しかし、この日は風が心地よく、ジョージの母は家全体を涼しく保つために全ての窓を開け放っていました。そしてその一見些細な行動が、後にジョージたちに壮絶な挑戦をもたらすことになるとは、この時点では誰も知る由もありませんでした。 庭からはセミの騒がしい合唱が聞こえ、家の中もその甲

      • 【お好み焼きの秘密】

        東京、2100年。超高層ビルが立ち並ぶ中、ユイの店「ユイの未来焼き」は特異な存在感を放っていた。店で提供されるお好み焼きは、何と食べた者に一時的な超能力を与えるという。 初めはただの都市伝説として噂されていたが、テレビで一般人が浮遊する姿が放映され、それがユイのお好み焼きの力だと紹介されると、その店には行列ができるようになった。 しかし、この能力は適切に制御しないと危険で、事故やトラブルが増え始める。政府は「ユイの未来焼き」の閉店を決定。ユイは自分が何を引き起こしてしまっ

        • 【蘇る過去の影】

          さ暗い夜、一人の男が古びた廃屋を訪れました。彼は自分の記憶を取り戻すためにこの場所に来たのです。何故か突然、彼は過去の出来事をほとんど覚えていなくなっていたのです。 足元には不気味な気配が漂い、廃墟の中で奇妙な音が響きます。記憶を取り戻すためには、彼はこの廃屋に隠された手掛かりを見つけなければなりません。 やがて男は、奥の部屋で古びたノートを見つけます。ノートには彼自身の手書きで、過去の出来事や感情が綴られていました。しかし、それらの情報だけでは完全な記憶は戻ってきません

        【消えた夏の花火】

          【美しき鯨の歌】

          碧い海に浮かぶ孤独な鯨の姿が、幻想的な光を放ちながら、静かに波立つ水面を舞い踊る。 鯨は寂しさを知らず、美しい歌を奏でる。その歌声は海を超え、星を越えて、宇宙の彼方まで届くと言われる。 遠くの漁船からも、鯨の美しい姿が見えた。しかし、彼らは捕らえることはしなかった。その鯨の美しさに触れることは、心の至福であり、命を尽くして守るべき宝であると理解していたのだ。 だが、ある時、無謀な漁師たちが現れた。彼らは鯨の美しい歌を聞きつけ、欲望に溺れ、貪欲に鯨を追いかけるのだった。

          【美しき鯨の歌】

          【秘密警察を宣伝してみる】

          星系間を飛び交う広告デザイナー、フレッドは日々の仕事に疲れ、新たな刺激を求めていた。ひょんなことから聞いた秘密警察の噂は彼の創造性をくすぐり、未知の興奮と期待感が湧き上がった。秘密警察の広告を作り、その存在を周知する。この荒唐無稽なアイデアが、彼の退屈を破るきっかけとなった。 フレッドはあらゆる秘密警察の噂を元にビジュアル広告を作成し、「宇宙最高の安全をあなたに。秘密警察」という皮肉たっぷりのキャッチコピーと共に宇宙ネットにアップロードした。秘密警察、それは一部の者しか知ら

          【秘密警察を宣伝してみる】

          【失われた音】

          フレッドは時計職人の家系に生まれ、世代を重ねるごとに受け継がれてきた技術と伝統を大切にしていました。彼の祖父も父も時計職人で、時計の微細な部分を組み立て、それぞれのギアが完璧にはまり合う音、振り子が静寂を切り裂く音、それら全てが彼にとっては家族の誇りであり、生きがいでした。 しかし、時代の流れと共にアナログ時計が街から姿を消し、デジタル時計が増えていきました。フレッドは自分の愛する音、職人としての誇りが消えていくことを悲しく思っていました。 ある日、フレッドは手に入れた一

          【失われた音】

          【種の旅人】

          壮絶な戦争と無数の災害が織り成す未来、そこにフレッドは目覚めた。彼は人類最後の種子として選ばれ、滅びゆく地球を再生させるために旅を始める。 広大な荒野となった地球。彼が見たのはかつて人類が築き上げ、そして破壊した記憶の片々だった。しかし、フレッドは新たな命の芽を見つけるべく、歩みを止めることはなかった。 年月は流れ、彼が見つけたのは一輪の小さな花。花は希望を象徴し、彼の心に新たな力を与えてくれた。フレッドはその花を育て、人類が再び繁栄する未来を見つめた。 だが、ある日彼

          【種の旅人】

          【夢見る森】

          とある町のはずれに、大昔から語り継がれる神秘的な森がありました。その森には、美しい花々が咲き乱れ、見たこともない鮮やかな色の蝶々が舞い踊り、聞いたこともない美しい鳥のさえずりが聞こえてきます。しかし、その美しさの裏には一つの伝説がありました。それは、「夜中に森に迷い込むと、見たこともない夢を見る」というものでした。 ある青年、ジョージはその伝説に魅せられ、一晩森で過ごすことを決めました。満月の下、彼は森へと足を踏み入れました。木々が月明かりを反射し、その光景は神秘的で美しか

          【夢見る森】

          【最後の楽園】

          かつて、人類が住む地球は豊かな自然に溢れ、様々な生物が共生していました。しかし、時間が流れるにつれ、人類は自然を破壊し、他の生物を滅ぼし、地球を見る影もない惑星に変えてしまいました。 そんな中、人類は新たな住処として、地球に似た環境を持つ惑星「パラダイス」を見つけました。人類は、再び自然を破壊し、他の生物を滅ぼすことなく、新たな楽園で平和に生きることを誓いました。 そして、青年ジョージは最初の移住者として「パラダイス」に赴きました。新たな惑星は確かに美しく、未知の生物や植

          【最後の楽園】

          【半笑いのポッキーゲーム】

          静かな田舎町、灰色の空の下。学生のジョージとロバートは、雑然とした喫茶店へと足を運んだ。壁に掛けられた古びたポッキーの看板が二人の目にとまり、興味津々で店内へと足を進めた。 壁には薄暗い文字で「半笑いのポッキーゲーム」と書かれていた。微笑みながらその言葉を読む店主が、ふたりに向かって言った。「ふたりでプレイするのかい?」 ジョージとロバートは、確信のある微笑みを顔に浮かべ、それぞれ一本ずつポッキーを手に取った。お互いの目を見つめ、口元へと持ち上げ、同時にポッキーを咥えた。

          【半笑いのポッキーゲーム】

          【一杯のスープ】

          ニナは小さな町で人気のスープカフェを経営していました。彼女のスープは一日一種類しかなく、毎日違う味が出されます。この特性が評判となり、町の人々は毎日どんなスープが出されるのか楽しみにしていました。 ある日、ニナは予告もなく店を閉じました。驚いた町の人々は何が起きたのかを知りたがり、心配する人々がニナの家を訪れました。しかし、ニナは笑顔で「明日、新しいスープを皆さんにお出しする予定です。それまでお待ちください」とだけ言いました。 翌日、ニナのカフェは再びオープンしました。そ

          【一杯のスープ】

          【真実の鏡】

          サムはこの街で最も有名な占い師でした。彼の予言は常に驚くほど正確で、町の人々は彼の言葉を絶対のものと信じて疑いませんでした。 ある日、サムが大きな発表をすると町中が騒ぎ立ちました。彼が自分の予言の秘密を明らかにするというのです。人々はワクワクし、サムの家に集まりました。 サムはそこで「真実の鏡」と呼ばれる小さな鏡を見せました。その鏡を通して見れば、未来が見えると言います。人々はそれぞれがその鏡で自分の未来を見たいと待ち焦がれました。 だが、鏡の前に立った彼らが見たものは

          【真実の鏡】

          【記憶の箱】

          ジョージは年老いた男性で、彼の家の地下室には古い箱が何箱も積み上げられていました。それらの箱は全て、彼の過去の記憶を物語るアイテムでいっぱいでした。 ジョージは毎日一つずつ箱を開け、中に入っているアイテムを手に取り、過去の思い出に浸るのが日課でした。とある日、彼が開けた箱の中には、彼がかつて愛した女性、リリーとの写真と一緒に、一枚の奇妙な地図が入っていました。 その地図には、彼が子供の頃に住んでいた街の詳細が描かれていましたが、その中には、彼が記憶している以上の場所が描か

          【記憶の箱】

          【地球外からの訪問者】

          ある日、平凡なオフィスワーカーであるジョージは、会社の電子メールに一通のメッセージを見つけました。件名は「地球外からの挨拶」で、差出人の名前は「ゼクストラ」。彼は好奇心に負けて、そのメールを開きました。 「こんにちは、ジョージ。私は遥か遠くのゼヌビア星から来たゼクストラという者だ。君が私たちの存在を信じてくれるかどうかわからないが、事実だと受け止めてくれ。私たちは地球のテクノロジーを手に入れるために、君に連絡を試みた。君が我々に地球の最新のテクノロジー情報を提供してくれたら

          【地球外からの訪問者】

          【無知の災厄】

          「気候変動?それとも他の何か?」世界は混乱の渦中にありました。地球温暖化、極端な気象、増加する自然災害。全てがかつてないスピードで進行していたのです。 ジョージ・ブライトン博士、気候科学者は、日々データとにらめっこしていました。彼は数年間、地球の異常気象について独自の調査を進めていた。その結果、地球上だけでは説明できない特異なパターンを見つけました。 ある日、彼はショッキングな発見をします。この異常気象、それは自然の変動だけでは説明できない。もっと恐ろしい可能性があること

          【無知の災厄】