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【真実の鏡】

サムはこの街で最も有名な占い師でした。彼の予言は常に驚くほど正確で、町の人々は彼の言葉を絶対のものと信じて疑いませんでした。

ある日、サムが大きな発表をすると町中が騒ぎ立ちました。彼が自分の予言の秘密を明らかにするというのです。人々はワクワクし、サムの家に集まりました。

サムはそこで「真実の鏡」と呼ばれる小さな鏡を見せました。その鏡を通して見れば、未来が見えると言います。人々はそれぞれがその鏡で自分の未来を見たいと待ち焦がれました。

だが、鏡の前に立った彼らが見たものは、ただ自分自身の顔だけでした。誰もが何も見えずに戸惑い、サムに詳しい説明を求めました。

サムは静かに言いました。「あなたたちが未来を知りたければ、まず現在の自分自身を理解することだ。それが真実の鏡の秘密であり、その鏡はあなた自身なのだ。」

町の人々は驚きました。彼らが本当に必要としていたのは、未来を占う鏡ではなく、自分自身を見つめ直す勇気だったのです。そして彼らは理解しました、未来を予知するためにはまず現在を理解することが最も重要であると。


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財前ゴボウ
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