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【海の旋律】

美しい蒼色の海に魅了された音楽家、サキは、小さな海辺の町に越してきた。心地よい町では、潮の香りと海鳥の声が絶えず、そして何よりも「囁く海」があり、その特有の波の音がまるで言葉を交わしているかのように聞こえた。しかし、その囁きを理解する者はほとんどいなかった。

サキはその囁きに耳を傾け、心を奪われた。音楽家としての彼女は、海の音が奏でる旋律を感じ取り、その音楽を自分の楽器で再現しようと日々波の音色と向き合っていた。

しかし、ある日サキは海の音色に変化を感じ取った。それは泣き叫ぶような、深く胸を揺さぶる音楽だった。サキはその旋律から海底の生物たちが何かに苦しんでいることを理解した。

その事実を町の人々に伝えるため、彼女は行動を起こした。サキの提案で、町の人々は海への感謝の祭りを開き、その中で海の声を救うための祈りを捧げた。彼らは手作りの花輪を海に投げ入れ、海が再び平穏な旋律を奏でることを心から願った。

そして、その祈りが届いたかのように、海は再びその美しい旋律を奏で始めた。その音色は以前よりも豊かで、何より美しかった。町の人々はその音色に耳を傾け、海の旋律を尊重するようになった。

最後に、サキは再び海辺に立ち、美しい海の旋律を聞きながら微笑んだ。その透明感あふれる海の美しさと、その中に住む生命たちの営みが彼女の心を満たし、彼女の音楽に新たなインスピレーションを与えた。

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財前ゴボウ
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