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【時間泥棒】

町に住むフミコは、時間が止まる時計を持っていました。この時計は特別なもので、ボタンを押すと時間が一時的に止まり、フミコだけが行動できるようになるのです。

ある日、ジョージという名の新しい隣人が引っ越してきました。ジョージは町で最も成功した起業家として知られており、彼の時間は常に忙しさとビジネスでいっぱいでした。

フミコはジョージに興味を持ち、一度時間を止めて彼の家を覗き見ることにしました。彼女はジョージの生活を見て、その豪華さと成功に感動しました。

しかし、時間を止めて彼の生活を覗き見ることが習慣になり、フミコは自分の時間をジョージの生活に費やすようになりました。その結果、彼女自身の生活は疎かになり、彼女の時間はほとんどがジョージの観察に消費されました。

ある日、フミコはふと気づきました。時間を止める能力を持つ彼女が、自分の時間を他人の生活に費やしていることに。彼女は自分自身が最も時間を大切にすべき人物であるにもかかわらず、その時間を他人に捧げてしまっていたのです。

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財前ゴボウ
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