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冬場の高齢者ケア ~ヒートショックを防ぐために知っておきたいこと~

皆様、あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。

先ほど外に出たら、12月とは一味違う寒さを感じました。年末よりもグッと身に沁みる寒さです。

そんな冬の寒さが本格化するこの時期、高齢者のご家族や介護に携わる方々にぜひ知っていただきたいのが、**「ヒートショック」**という現象です。
特に、降圧剤を服用されている方は注意が必要です。今回はヒートショックの仕組みやリスクを解説し、ご自宅でできる具体的な予防策を、薬剤師の視点も交えてご紹介します。


ヒートショックとは?

ヒートショックとは、急激な温度変化によって血圧が大きく変動し、心臓や血管に負担がかかる現象です

高齢者は血管が硬くなり、体温調節機能が低下しているため、ヒートショックによる健康被害を受けやすい傾向があります。
さらに、降圧剤を服用している方は、血圧が急激に下がるリスクがあるため、より慎重な対応が求められます。


降圧剤を服用されている方へのリスク

降圧剤は血圧を適切にコントロールするための薬ですが、体温の急激な変化による血圧の上下動に対しては注意が必要です。

例えば:

1. 温かいお風呂に入ったとき

降圧剤の影響で血圧が低下しやすくなっている状態で、さらに体温上昇によって血管が拡張しすぎると、めまいや失神を引き起こす可能性があります。
若い方でも、湯船に長く入り立ち上がる際、目眩が起きることもありますよね。

2. 寒い脱衣所やトイレで血圧が急上昇

寒さで血管が収縮するため、降圧剤の効果が追いつかず、急激な血圧上昇が心臓や脳に負担をかけることがあります。

3. 血圧の乱高下が引き起こす健康リスク

血圧が急激に上下することで、脳梗塞や心筋梗塞、さらには脳出血のリスクが高まります。


降圧剤を服用されている方が取るべき5つの予防策

1. 入浴前の血圧チェックを習慣化する

入浴前に血圧を測定し、普段よりも低すぎる、または高すぎる場合は、無理に入浴せず、体を部分的に温める方法に切り替える。
血圧が高すぎる方は、熱い湯船で血圧が急激に低下することで、血圧差が生まれてしまいますし、
血圧が低すぎる方は、同じく熱い湯船でさらに血圧が低下してしまうリスクがあります。

2. 医師や薬剤師に相談する

寒い季節に降圧剤の効果が強すぎる場合、服用時間や量を調整することが検討できます。まずは主治医や薬剤師に相談してください。

ちなみに、、
余談ではありますが、冬場は寒さにより普段よりも血圧が上昇する傾向があります。
夏場と比較して10-20ほど高くなることもありますのでご注意ください。

3. お風呂の温度を40℃以下に設定する

降圧剤の効果で血圧が下がりやすい方は、高温の湯船は避け、40℃以下のぬるめのお湯で短時間入浴するようにしましょう。

4. 脱衣所や浴室を温める

室温の急激な変化を避けるため、脱衣所や浴室に暖房器具を設置し、室温を一定に保つことが重要です。
脱衣所で使用できるハロゲンヒーターも売られているので、ぜひ検索してみてください。

また、生活の工夫の一つとして、一番風呂を避ける、といったものもあります。
一番風呂を避けることで、浴室および脱衣所の温度が上昇し、急激な温度変化を避けることが可能です。

5. 薬の服用タイミングを考慮する

降圧剤を服用してすぐの入浴は避け、薬の効果がピークを迎える時間を避けたスケジュールで入浴するようにします(例:薬を朝飲む場合、入浴は夕方にするなど)。

ご自身が服薬されている薬の効果ピークについては、薬局薬剤師にぜひ聞いてみてください。


ヒートショック予防における薬剤師の役割

薬剤師として、降圧剤を使用している患者様には以下のようなサポートを行っています。

1. 血圧変動のリスク説明

ヒートショックが起きるメカニズムをわかりやすく説明し、日常生活での注意点をお伝えします。

2. 服薬タイミングや量の相談対応

患者様の生活リズムや季節に応じて、医師と連携しながら最適な服薬プランを提案します。
先ほどご紹介したように冬場は血圧が上昇しがちです。体調によっては冬場はお薬を変更対応することもあります。

3. 血圧計や温度計の活用を指導

血圧計の正しい使い方や測定タイミングを指導し、血圧のモニタリングを促進します。
血圧計は測定方法を誤ると、実際の血圧から大きく離れてしまうこともあります。
この機会に血圧の測定方法を見直してみてもいいかもしれません。


介護者やご家族に向けたアドバイス

介護者やご家族は、高齢者が降圧剤を服用している場合、特に次のポイントを意識してください。

1. 入浴中は声をかける

高齢者が湯船で長時間過ごさないように、5~10分ごとに声をかけたり、タイマーを設定したりすると安心です。

2. 急な体調変化に備える

めまいやふらつきがあった場合は、無理をせずすぐに温かい場所で休むよう促します。
目眩が長時間続く場合や嘔吐を伴う場合、すぐに受診するようにしましょう。

3. 日々の血圧を記録する

血圧計で日々の測定値を記録し、異常があれば早めに医師や薬剤師に相談してください。
自身の日頃の血圧を把握しておくことで、体調の変化を予測することができるようになります。


最後に

冬場の寒さと降圧剤の影響が重なると、ヒートショックのリスクが高まるため、適切な予防策を講じることが重要です。
ご自身やご家族、介護者が知識を共有しながら、安心して冬を過ごせる環境を整えましょう。


私は、薬剤師として在宅医療の現場で培った経験を活かしながら、患者様やそのご家族、そして医療・介護の関係者が抱える課題に寄り添い、解決策を提案することに力を注いでいます。

また、訪問薬剤師としての実務経験と、大手調剤薬局における在宅医療分野の責任者としての視点を組み合わせ、多くの方々が薬剤師のサポートを効果的に活用できる社会を目指しています。

今後も、専門知識を分かりやすくお伝えし、一人でも多くの方が「薬剤師に相談してよかった」と感じていただけるよう努めてまいります。お困りごとやご質問がありましたら、ぜひお気軽にお声がけください。

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