Beɾogɹamという音声記号を作りました。
はじめに
英和辞典とかで、[]で囲まれた発音記号をよく見ますよね。
あれとほとんど同じ音声記号で
「国際音声記号(IPA(International Phonetic Alphabet))」というものがあります。
ここでは、英語の発音記号と区別する必要はありません。
IPAはこの世のほぼ全ての言語の発音を表すことができます。
しかし、これには大きな問題点(完璧でない点)があります。
覚えづらいという点です。
「いやいや、絵でもあるまいし、文字である以上覚える必要はあるだろ。」と思うかもしれません。
もちろん否定はしません。
ですが、口の形を抽象化して視覚的に理解できるようにすれば覚える量は減りましょう。
本題
例えばタ、テ、トの子音である[t]は図1のように、歯茎の裏に舌がついています。
これを抽象化すると図2のようになります。
左を人にとっての前方とし、
図2の線分ABを口蓋(上顎)、線分DCを顎とし、
それらに垂直な線分を舌とします。
カ、ク、コの子音である[k]は図3の状態で発音するため、
図4のように表します。
ここでちょっと専門用語が出ます。
図1で舌を当てている場所を「歯茎」、
図4で舌の根っこを当てている場所を「軟口蓋」と呼びます。
そして、図1と図4は舌を当てている場所が違います。
舌を当てている場所(舌以外の場合もある)のことを「調音点」といいます。
つまり、線分ABと線分DCに垂直な線は調音点を表しています。
子音の分類には、あと2つの観点があります。
「調音法」と「有声性」です。
調音法は、どのように声を出すかという観点です。
例えば、「ぱ」と「ふぁ」では、使っている部位は同じですが調音法が違います。
「ぱ」は「破裂音」、「ふぁ」は「摩擦音」といいます。
有声性は、子音の段階で声帯が震えているかという観点です。
日本語でいうと、濁音か否かです(清音というと語弊がある)(半濁音のパ行は濁音に含めない)。
子音の段階で声帯が震えていると「有声音」、
震えていないと「無声音」といいます。
「た」は無声音ですが、それが有声音になると「だ」になります。
しかし、日本語には濁音にできないものもあります。
それらは母音か有声音(そのなかでも鼻音が多い)です。
例:ア行、ナ行、マ行、ヤ行、ラ行、ワ行、ン *¹
これらを踏まえて
有声性 + 調音点 + 調音法 + 音
の書き方で「だ」の子音の[d]を表すとどうなりますか。
正解は「有声歯茎破裂音」です。
なぜこんなに長々と専門用語の解説、さらにクイズまで出したかというと、
この後めっちゃ専門用語が出てくるからです。
がんばって!
調音点はわかりました。では調音法と有声性はどう表しましょう。
それが、なんか上にある円です。
「それのどこが視覚的なんだよ」
と思った方もいらっしゃるでしょう。
ごめんなさい。調音法と有声性は目で見ることができないのでどうしても恣意的な記号を使うしかないのです。有声音に関しては、音が出ているという意味で電気要図記号の交流のように「〜」を描けば良いかもとも思いましたが、それもオシロスコープを用いて知覚することのできるグラフのようなものであって実際の形ではないため不採用としました(ごめんね)。
これに色々かくことで特定の子音を表せます。
有声性は2パターンしかないからシンプルです。
円に縦線を描くと有声音、描かないと無声音になります。
調音法は横線をちょっと描いたりたくさん描いたり中途半端に描いたりします。
例です。
図5:[s]
図6:[z]
図7:[j](ヤ行)
図8:[ɾ](ラ行)
あとは鼻音です。鼻音とは、鼻から声を出すやつ*²です
例えば、ナ行、マ行、ンです。
これには僕なりの持論(鼻音の持論ってか)があります。
音声学では、鼻音は調音点の一つとされています。
しかし(ここから僕の主観)鼻腔を使うということは
口腔も同時に使うことができます。つまり、摩擦音であり鼻音である音の発音も可能ということです。
ということでこの意見に従って設計した結果、図9のようになりました。
このように、鼻音を円で表せば摩擦音や接近音などの調音点と両立できます。
IPAに勝ちました。
さいごに
これで大まかな説明は終わりですが、全ての書き方を説明したわけではありません。このnoteでは音声学の内容の説明などもして、そこまで詳しくない人でもなんとなくは理解できるようにしました(理解できなかったらごめん)。
この音声記号に於ける全ての調音法・調音点の具体的な書き方の説明も別のタイミングでする予定ですから待っていてください。そのときは淡々と紹介していくつもりです(熱が入ってうんちくを詰め込む可能性もある)。
あと、母音も作ったのですがわざわざ紹介するほどでもないので
noteにはしません。何かしらで紹介するのでそれも待っていてください。
画像や表は好きに使ってもらって構いません。
どんどん広めてください。
脚注
*¹日本語の濁音・清音がもつ法則でいうとハ行は濁音にできますが、
音声学的には有声音にはできません。現代のハ行の子音は無声声門摩擦音といい、声帯で摩擦する音です。有声音は子音の段階で声帯を振動させる音でしたよね。しかし、声帯で摩擦させながら振動させることはできません。
ではなぜハ行は調音点の違うバ行として濁音を作ることができるのでしょう。
これの理由は、平安時代の頃は「ハ」と書いて「パ」と読んでいたからです。
[p](無声両唇破裂音)を有声音にすると[b](有声両唇破裂音)になります。
しかし、言いやすくしたかったのか発音が変わります。
[p]→[ɸ](ファ行)→[h]となったのです。
先程述べたように[h]は有声音にできません。だからハ行の濁音として元の形の濁音であるバ行が残ったのでしょう。
現代でもパ行は半濁点をつけることによって[p]を表すことができます。
一度消えたのに復活した理由は、オノマトペや外来語の影響でしょう。
*²一般的には(といっても音声学の中の話)、鼻音は調音法の一つとされていますから、「やつ」ではなく「調音法」と表せばよいと思うかもしれませんが、あとの内容を踏まえると「調音法」とは言いづらいため、「やつ」と表しました。