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第52話 CFマトリクス分析❷アクルーアル

キャッシュフローマトリクス(以下、CFマトリクス)について徹底解説するシリーズ第2回です。第1回では営業CF×投資CFの組み合わせで構築される一般的なCFマトリクスによる分析方法について解説しました▼

営業CF×投資CFのCFマトリクス

一方で今回はザイマニが考案するオリジナルの分析手法である「税引後利益×営業CF」でアクルーアルの推移を捉える分析について解説します。アウトプットイメージ例がこちら▼

各社の利益の質を評価する指標「アクルーアル」について詳しく知りたい方、マトリクス図による分析の幅を広げたい方はぜひご覧くださいませ。

■参考文献(一例)
たった10日で決算書がプロ並みに読めるようになる! 会計の教室
決算書の暗号を解け! ダメ株を見破る投資のルール
企業価値向上のための 経営指標大全

■想定読者
第51話 CFマトリクス分析❶フリーキャッシュフローを読み、CFマトリクスの概要や独自性を理解できている方。未読の場合、ぜひ❶を先にご覧くださいませ。

それでは本編スタートです▼

①アクルーアル版CFマトリクスの概要

アクルーアル版のCFマトリクスとは横軸に税引後利益、縦軸に営業CFをとった4象限のグラフですあり、このマトリクスのどこに位置するかで各社の利益の質を効率的に読み取ることができる分析フレームワークです▼

マトリクス図の第1象限(右上)の半分に三角形の灰色が付与されていますね。これはアクルーアルがマイナスになる範囲の一部であり、このマトリクス図上で最も好ましい(利益の質が良い)領域を示します。

なお、アクルーアルがマイナスとなる領域は上記の範囲だけではなく、マトリクス図全体の左上半分を占めます▼

アクルーアルがマイナスの領域の中で、なぜ第1象限(右上)の半分だけが最も好ましい領域なのでしょうか?それを理解するため、まずはアクルーアルの計算式やその意味するところを整理しておきましょう▼

アクルーアル版CFマトリクスの横軸税引後利益
=当期純利益+特別損失ー特別利益

アクルーアル(会計発生高)とは、会計上の利益CFの差分です。

会計上の利益とは当期純利益に特別損益を足し戻した値です(ザイマニのCFマトリクス図上ではこれを税引後利益と表現)。このような処理をするのは、特別損益の大半が突発的なものであり、本業によるCFの動きと直接関係ないことが多いためです。一方のCFは営業CFを使用します。これは本業ビジネスで稼いだキャッシュのみを使用することを意味します。

つまり、会計上の利益と営業CFの差分であるアクルーアルとは「本業ビジネスによる売上がすぐにキャッシュになっているか?」を測定する指標と表現できるでしょう。もしアクルーアルがマイナスであれば、年間の現金収入が会計上の利益よりも多いことを示し、結果的にその企業の利益が「キャッシュを伴った質の良い利益」であることを示します。

これは逆に言えば、アクルーアルがプラスの場合、まだ現金化されていない利益が多く計上されていることを示します。その利益が将来的に現金化できるかは不確実であるため、相対的に「質の悪い利益」と言えますね。

やや余談ですが、このアクルーアルは不透明な会計処理粉飾会計を見抜く目的で使用されることもあります。参考|会計問題、身構える市場 「利益の質」で投資先選別 - 日本経済新聞

つまり、アクルーアルがマイナスの企業は会計上の利益にキャッシュフローの裏付けがある=将来的な資金回収の不確実性が低い=損益計算書・キャッシュフロー計算書の観点から見る財務安全性が高いと評価できます。黒字倒産の可能性が低いとも表現できますね。

以上、長くなってしまいましたがアクルーアルの概要について整理しました。ここでアクルーアル版のCFマトリクスに話を戻しましょう。

アクルーアルはマイナスである方が好ましいことを踏まえた上で、なぜマトリクス図の第1象限(右上)に位置していると最も好ましいのか?について解説を続けます▼

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