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第56話 予測財務諸表❶従来予測 vs プログラミング予測
プログラミングを活用した上場企業の業績予測について徹底解説するシリーズです。
「親会社や投資家など重要なステークホルダー向けに将来の数字を論理的に説明したい」「勤め先や転職先企業の将来性・倒産リスクを分析しておきたい」そんな時に重宝するPythonでの効率的な業績予測について解説します。
手元にある実績データから将来の値を予測する実践的なフローを知りたい方、実際に業績予測に挑戦してみたい方に特におすすめです。
■参考文献(一例)
・Pythonによる時系列予測
・Pythonによる時系列分析 ―予測モデル構築と企業事例―
・一生モノのビジネス教養 データサイエンス大全
※ Amazonアソシエイトを利用しており、上記リンクから商品を購入していただいた場合、ザイマニに書籍の紹介報酬が支払われる可能性があります。
■想定読者
GoogleColab、Pythonの初歩を理解しているビジネスパーソン。具体的には以下の記事を読了済、またはPythonツール「BEGINNER|ビギナー」を使ってColabを動かした経験がある方。
・第54話 Python財務分析入門❶GoogleColabの基本
・第55話 Python財務分析入門❷ChatGPTとの連携
・BEGINNER|プログラミング初心者向けPython入門ツール
シリーズ初回となる今回は「担当者がエクセルなどを用いて将来の数字を1から予測する」従来予測と、ザイマニが提案するプログラミング予測の概要や違いについてまとめます。それでは早速スタートです▼
従来予測とプログラミング予測の概要
本レポートでは2つの予測方法を以下のように区分します▼
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まずは従来予測について詳しく解説します。
中期経営計画や予算の策定など「将来の数字」が必要となった場合、エクセルを使用して以下のような手順で予測するのが主流です▼
①PLの数字を順番に予測する(予測PL作成)
・事業環境や実績から来年度以降の売上高を予測
・売上高に紐づく変動費を予測、その後固定費を予測
・営業利益や当期純利益など各種利益を予測する
②予測PLの数字を使って予測BSを作成
・売上に連動する項目を予測(売上債権など)
・売上に連動しない項目を予測(固定資産など)
・予測PLの当期純利益や配当計画から利益剰余金を予測
・BSの左右をバランスさせるために現預金と借入金で調整する
つまり、現場の知見や事業環境、これからの投資計画など膨大な情報をもとにひとつひとつ数字を予測して未来のBS・PLを丸ごと作成するイメージです。将来の平均売上高成長率などノイズが大きい項目は「会社の慣例を踏襲してX%としよう」といった形で「えいや!」で決まることも少なくありませんが、社内の人間に対しては比較的納得感のある数字に落ち着く可能性が高いのが特徴です。
要するに、従来予測の実践は時間はかかりますが予測結果に納得感を持ってもらいやすく「社内の合意を得たい」シーンで重宝されます。
一方でプログラミング予測について。この文脈でのプログラミング予測とは、Pythonで使える統計モデル(Prophet プロペット等)を利用した予測方法を指します(Prophetの詳細はザイマニが開発した予測財務諸表グラフ化Pythonツール「YOSOKU」の実践ガイドページ参照)。
統計モデルによる予測では、基本的に各項目の過去の実績データだけを材料に予測を行います。例えば、過去の売上高の推移から将来の売上高を、過去の売上原価から将来の売上原価を予測します。
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事業環境や会社の慣例、または勘定科目間の連動を考慮せず、採用した統計モデルがすべての設定項目の予測値を自動的に算出してくれるため、一度コードを作成しておけば誰でもスピーディーに予測できるのが特徴です。
なお、YOSOKUでは「営業利益」など他の項目から算出できる項目についてはそれらの予測値を使って算出しています。これは営業利益の増減要因を特定しやすくするためです。
例:予測営業利益 = 過去の営業利益の実績データから予測ではなく
予測営業利益 = 予測売上高 ー 予測売上原価 ー 予測販管費 で計算
以上が従来予測とプログラミング予測の概要でした。ここからは2種類の予測方法の違いを比較していきます▼
従来予測 vs プログラミング予測
2種類の予測方法の相違点を比較表にまとめました。
こちらの画像は保存推奨です▼
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以下では、上記画像の中でも特に理解しておくべき違いについて詳しく解説します▼
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