『負けヒロインが多すぎる!』第5話小考
まずもって目に留まるのは、一目見て魚眼っぽいと思うショット群。けれども用法はそれぞれ異なっていて、空間を広く取りつつ “歪んだ” 雰囲気づくりに作用したり、キャラクターたちの注目度を高めつつ簡素な画面に着地しないよう工夫したり、むしろショットを切り取る額縁として機能したり、色々。
5話はとことんカメラの位置やレイアウトに、あからさまなほどにこだわりを感じた話でもあって、たとえばこんなショット群があった。明らかに異様で、ともすると集中は欠いてしまうけれど、個人的には見ていて愉しい類いの工夫だった。
朝雲の足に語らせる芝居も良かった。左と右、つま先とかかとでリズムよく重心を移す。口では他人のことを褒めて自分を貶めていても、どこか納得できないかのように足はずっとその場にとどまって、“二の足を踏む”。シンプルだけど、今話のバラエティ豊かな表現のひとつとして見せてくれたから良かった。
あと、今話は中景~遠景の描写がかなり良いカットがいくつかあった。レイアウトもキマっててお気に入りなのはこのカット。権藤の顔のパーツをいっさい描かず、桂樹を慰める芝居に徹したところ、本当に良かった。光の当て方も、好き。
中景~遠景で言えば、八奈見がカフェから勢いよく飛び出してきて逆をパッと見る一連の芝居も良かった。怒りに任せて飛び出して、思わず足元に力がこもってなお、リズミカルに、きびきびと辺りを見渡す杏菜の可愛げのある運動がよく描かれていた。
あとはここも、アニメ的なウソをついていないということを映像に白状させる逆説的なカットで良かった。伊達メガネにはレンズが入っていないのだから、眼鏡越しの輪郭と眼鏡越しでない輪郭は自然に繋がる。芝居でもって種明かしをする画面はしかし、「輪郭線」という最大のアニメ的ウソは保持したまま。
加えてラストも、鏡を利用した構図で、対話しているはずの三者をひとつの画面に収め、きちっと見ごたえのあるショットを作ってくる。ちゃんとしてる。
これだけ手数があるんだよと、これでもかと大盤振る舞いされると、さすがに愉しい。たとえば固定的で静的な画面を貫くこともひとつのスタイルだけど、これはこれで、バラエティの豊かさを魅せる話ということでひとつのスタイルを貫いている、と感じた。
もう画像は貼らないけれど、志喜屋に水を飲ませる官能的なカットも成功していた。手前を生徒たちに通らせること含め、小気味よいカット割りも、そしてやはり中景の芝居も、よくできていたように思う。
あとあそこはさすがに安済知佳冥利に尽きる、というか、息遣いのある生っぽい芝居は、さすがに『リコリコ』以降のメルクマールっぽい。
あとごめんけど、さすがに今話は上田麗奈フィルム認定です。イヤホンで聴いてください。ごめんけど。
あとEDね。EDも見ましょう。
※画像の引用はすべて『負けヒロインが多すぎる!』第5話に拠り、すべての権利は「©雨森たきび/小学館/マケイン応援委員会」に帰する。