読書交換
本を読まない友人と、それぞれが選んだ一冊を読み合う、という遊びを始めることにした。もちろん買った本はまず自分で読み、そのあと交換っこして相手のセレクトした本も読むのである。僕もそれほど読書をするわけではないが、相手は比較にならんくらい読まない人種なので、できるだけ平易な一冊がよいだろうと宮部みゆきの作品から選んでもらうことにした。僕もいくつかの作品をパラパラ読んだくらいなので交換後も楽しめるだろうし、こちらは読もう読もうと思っていたがなかなか機会がなかった『火車』をセレクトしたので二度おいしい。ただ、先方は本を読みなれておらず、終えるのに時間がかかると言っていたので、僕もリハビリがてら日本人作家の本を読んで邦文の‘腹’にしておくことにした。たまたま手に取った書棚の積ん読、湊かなえ『ユートピア』である。この手の作品は小・中学生のみぎりによく読んだものだが、その後は海外SFや純文学をもっぱら読んできた身なので、ちかごろはまったくと言っていいほど触れてこなかった領野でもある。
序盤の身の上話がすごく単調でなかなかページをめくりにくかったが、いくつかのストーリーラインがある出来事を契機に集束していく様には、なるほどこれぞミステリの醍醐味だという快感を覚える。主人公三人の会食あたりから加速度的に面白くなってゆくのである。懐かしい感覚だ。現代ミステリから離れていたぶん、このある種の純粋な面白さには久しく出会っていなかったような気もする。友人が課題図書を読み始めるころにはこちらは一冊消化できると思うが、これを機に本を読む量を増やしてみてもいいかもしれない。本ほどコスパのいいメディアはないのだから。
コスパという点では、課金してるにしろ初期投資1500円(セール時)ほどで3000時間遊べるゲームの例があるのでなにをかいわんやなんだが。
生きるわよ