燃え尽き症候群というより単なる疲労
「燃え尽き症候群」という言葉があるが、それに似た症状なのかな、これ。というくらい今日はクタクタに疲れ果てている。
例の「女性の日」から予定を詰め込みすぎたせいなのかもしれない。ウクライナ語とベラルーシ語の舞台をドイツ座(Deutsches Theater)で立て続けに観たのだが、扱われているテーマも戦争で重く、英語やドイツ語の字幕を2時間くらい猛スピードで読む必要に駆られたため非常に多大なエネルギーを奪われたのである。
とにかく今日は、午前中に友人と目をショボショボさせながらコーヒーを飲み、帰宅してからは母親と久しぶりにLINEでビデオ通話をし、お腹が空いたのでお昼を食べたらもう午後3時前だった。
そして余りにも眠いので、眠気覚ましにリングフィットを1時間くらいやったら、ぐったりと疲れてしまい椅子に座ったまま船を漕いでしまった。いつもなら少し眠い時に体を動かすと目が覚めたりもするのだが、今日は単純に疲労メーターが限界値を超えてしまったらしい。
完全に燃え尽きてるやん
脳内でそんな声が聞こえた。何もやる気が起きなくなったわけではないが、まさに「大きな目標を達成した」反動のようなものが起きているのかもしれない。冷静に考えてみれば別にここ数日で何も達成はしていないのだが、それくらいのインパクトを生キアヌは私に与えたのだろう。キアヌ・リーブス恐るべし。一瞬の出会いによるインパクトがデカすぎる。
そして残念ながら、この世の中も相変わらず狂っている。
ウクライナから招待されたLeft Bank TheaterによるHA*L*Tは2022年2月24日に稽古が始まった「Hamlet」にまつわる話だ。ロシアの侵攻日と重なったことで「Hamlet」は上映される機会を失いHA*L*T(ドイツ語でSTOPの意)と化してしまう。
劇中のダイアローグの中には戦争で命を落とした文化人たちの氏名と年齢が読み上げられていくシーンもあった。「ベルリンで客演をしているような場合ではない!」といったセリフも出てきたが、それがまさに彼らにとっての現実なのだろう。
ベラルーシのFree Theatre(BFT)は欧州で唯一、政治的な理由で活動を禁止された劇団だ。投獄を恐れ、劇団は2021年にロンドンへ拠点を移した。ホールに入るとシートの上には拘束され命を落とした人々のポートレートとその理由が示されたカードが並んでいた。
公演の内容についてはここでは詳細を述べることはしないが、ここ数日はまさにパラレルワールド。一方ではハリウッド映画のプレミア上映にキアヌ・リーブスが神のごとく降臨し、他方では戦いの最中にある国から命を懸けて作品を作り上演している人たちがいる。これが現実でもうずっとこうだったのだろうとは思う。
そしておそらく疲労の原因はこのギャップなのだろう。モスクワのクリニックでインターンをやっていたときも、似たような疲れ方をしていた。一方で特権を持つNASA職員たちのモスクワでの生活振りを、他方で一般市民として歯の治療費さえ捻出できない地元民である友人たちを見ていたからだ。どちらかに属していれば少しは楽だったのかもしれないが、限りなくアウェイだったとき。
今日の午前中にカフェで友人と話したときも、この「アウェイ感」についての話になった。例えば、ベルリンのフィルハーモニーに来ている人たちの層というものはある程度決まっている。ドイツ座の東欧圏がテーマの国際フェスティバルに来ている人たちもほぼ決まっている。そして、そこにいる人々とそれ以外の人々の交流といったものはなかなか生まれにくい。それぞれの文化圏が交差することは日常生活の上でもほとんどないし、交流となるとさらにハードルが上がる。
燃え尽き症候群から話題がそれてしまったが、そんなことをあれこれ考えているうちに今日も1日終わってしまいそうである。やっと目が覚めてきたが、もう外は真っ暗じゃないか。
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