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ロケ裏話① 突然のキャンセルとその理由

コロナ禍を挟んだことで、最近はほとんどロケに出ることもなくなった。もう時効だろう、ということで過去にあったロケの裏話なるものをいくつか書
いておこうと思う。そんな風に思ったのも、ふと以前勤務していた会社のホームページ上に過去に自分が投稿したロケの記事を見つけたからだ。

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2008年6月に3年ぶり2度目の「世界ふしぎ発見!」ロケをドイツのバイエルンで行った。

「ロマンチック街道」と言えばドイツの有名な観光名所である。その中でも日本人に一番人気と言ってほぼ間違いないのが、ルートヴィッヒ2世によるノイシュヴァンシュタイン城だろう。今回の取材テーマはルートヴィッヒ2世と彼の建造した3つの城が中心だった。

美しいバイエルン地方の自然と城の撮影となると、心配なのが天候だ。ロケ開始前の1週間はすっきりしない肌寒い天気予報に気を揉んだが、悪天候が残ったのはロケ初日の午前中のみ。その後は日中33度まで気温が上がり、快晴の日が続いた。しかし、炎天下での撮影になり今度は暑さとの戦いになった。
 
番組ではヘリやフェリー、SLなど乗り物がたくさん登場し、湖や山、牧歌的な草原、薔薇園などバイエルンの美しい自然も見所となっている。

さて、ノイシュヴァンシュタイン城、リンダーホーフ城、ヘレンキームゼー城の撮影だが、観光客が多いため撮影は開館時間外というのが絶対条件になっている。そのため毎朝6時前には起床して早朝に撮影を行い、その後は再度夕方から夜にかけての撮影という形になった。

ところが、サッカーのヨーロッパ選手権をドイツが勝ち進んだため、思わぬところで弊害が出ることになってしまう。

「明日の夕方は撮影が出来なくなるかもしれません。どうしてもと言う場合でも19時までが限度です!」

初日に会うなり、城担当者にこう告げられたのである。

「ん?」(そんな約束はしてないのになぁ? 19時までって、もしやドイツ戦が原因なのか!?)

撮影準備には城の所有者と事前に何度も書類をやりとりし、撮影許可を取っている。撮影許可を得ているのだから、こちらも早々簡単には引き下がれない。撮影クルーは撮影日に合わせてわざわざドイツまで来ているのだ。

ディレクター氏と現場で素早く相談。

「恐らく、彼はどうしてもサッカーの試合を家に帰ってみたいのでしょう。」
「そうなんですか!順調に撮影が進めば19時までには終わると思いますが…」

それなら早く撮影が終わるように逆に協力を仰げばいい、という考えに至り、次のようなお願いをすることにした。

・時短のため照明機材をあらかじめ城に置かせてもらう
・規定より早い時間から城の中で撮影のセッティングを開始できるようにしてもらう

いざ撮影が開始すると、担当者のサッカー熱のおかげで至れり尽くせりのご協力を得られることになり、予定よりもかなり巻いて終わったわけだ。次に撮影する部屋に真っ先に行って、コンセントの位置の確認までしてくれたのだから。

ノイシュヴァンシュタイン城・居間(武内カメラマン提供)

ホテルに予定よりかなり早く戻った私たち。ロビーにはサッカー観戦のため宿泊客がワイワイ集まっているところだった。

その日の対トルコ戦がこれまたすごかった!

スムーズに撮影も終わったので気分も良く、撮影チームとサッカー観戦で盛り上がったことこの上なし。

そして、それ以上に城の内観がすごかった!

撮影チームと「ひぇー、これはすごい!」と驚いてばかり。
ひとつの城につき2日当てていたので、じっくり隅々まで鑑賞しながら撮影を終えることができた。ルートヴィッヒ王にまつわる話や城の内装が思った以上に不思議だった。城の敷地内に人口の洞窟があったり、ダイニングテーブルが昇降機で上下したり。

一体何のためにこのような設備を作ったのでしょうか?

と、こちらは7月19日放送の番組を見てのお楽しみ。

シュタルンベルク湖、ルートヴィッヒ2世に捧げられた十字架

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もう随分前に番組は放送されたが、さすがはルートヴィヒ王、お城も想像上のな斜め上をいく設計になっている。これを書きながら、子どもたちを連れて一度はバイエルンのドイツらしいお城も見に行かないとな、と思った次第。

制作のテレビマンユニオンさんとは何度か「世界不思議発見」や「世界ふしぎ街歩き」で何度かご一緒させていただいたが、スタッフも優秀な方々ばかりで毎回とても楽しいロケになった。みなさん、今は何をされているんだろうか。

サポートは今後の取材費や本の制作費などに当てさせて頂きたいと思います。よろしくお願いします!