【AIで物語りを生成する】 重厚なストーリーを作る最重要ポイント。
小説家が「桃太郎の続編」をAIで生成していく連載6回目。
今回はAIで桃太郎2を生成していく連載の中で、もっとも重要な記事となるかと思います。もしAIで物語を生成しようと思っている方は、この記事だけでも読んでいって頂ければと思います。なお使用しているAIは「ChatGPT」の有料最新版「ChatGPT-4 Turbo」となります。
前回の第五回「桃太郎」の続編小説をAIが生成。第一章を書かせてみた。」という記事では、実際にAIに桃太郎の続編の第一章を書かせていきました。もしまだ読んでない、読んでみたい、という方はこちらをご覧下さい。
そしてすでにその第一章をご覧になった方、いかがでしたでしょうか?
「思ったよりもAIは良く書けている」
「これから盛り上がっていくんだろうな」
「想像とちょっと違った」
「面白くない」
という方もいるかと思います。
その第一印象はとても大切です。
というのも、もし第二章以降を書かせたとしても、その印象が変わることがないからです。AIは最初に与えられた指示通りに作業をしていくので、途中から自分で何かに気づいて改良していく、ということはありません。
つまり「よく書けている」と思えば、そのままよく書いていく可能性が高いのですが、「これから盛り上がっていくんだろうな」と思った場合は、物語のラストまで「これから盛り上がっていくんだろうな」という予感だけがあって実際はまったく盛り上がらないストーリーとなってしまうのです。
もし「面白くない」と感じたならば、その時点でこちらからAIに修正指示を出す必要があるというわけです。(でも、AIが面白い物語を生成してくれるかどうかは実際に書き出してみないことには分からないので、いずれにせよこれまでの作業は必要となってきます。)
さて、今回僕がAIの作った小説をどう思ったかというと、
「おい舐めてんのか、こっちは遊びじゃねーんだぞ!」
というものです。(遊びです)
第6回の今回は「AIで物語りを生成する」際のキモとなるAIへの指示の出し方に踏み込んでいきます。連載第4回で行った目次のブラッシュアップよりももう一段階深い部分の改稿です。
以前、AIで物語を生成する際の最も重要な視点として「AI作家の編集者」であることを説明しました。ボカロPにならって「AIP」と呼べるかも知れません。
その目線で、
AIが上げてきた原稿をチェックし
足りない部分、面白くない部分を整理して
辺りにある角材を拾い上げてAIをガンガン叩いて追い込む
という作業を行う必要があります(比喩です)。
お時間が許せばぜひ最後までお付き合い下さい。
一緒にAIの才能を引き出してより面白い物語を作っていきましょう。
作品の問題点をリストアップする
一度、物語の本文を生成した後に僕らが行うべきことは、
作品の問題点を自分でリストアップし、
それを解決するアイディアをAI作家に出させ、
アイディアを取捨選択して物語に組み込んでいく
というものです。
1.の部分は、まだAIは有効に機能しないのが現状です。
また自分(あなた)の感性を反映させるためにも、自分で「ここが引っかかる」というポイントを挙げていくほうが、より自分らしい作品をAIに生成してもらうことができます。
それでは、現在の原稿にどのような問題点があるでしょう?
僕としては、現在の「桃太郎2」の第一章部分は「これから何か始まりそう」という予感を与えているけれども、実際には桃太郎はイジイジしているだけで物語はほとんど前に進んでいない、と感じました。ここが問題です。つまり、
物語の立ち上がりが遅い、遅すぎる。
「後から面白くなるんです、どうか我慢して読み続けてください」とAIに言われても、読者からすればそんなもの待てるわけがなく、すぐにTikTokやYouTubeを立ち上げてしまうに違いありません。
ショートコンテンツ全盛の現代において、物語はその立ち上がりの早さを求められています。事件はすぐに起きなければなりません。
もちろん立ち上がりの遅い物語もたくさんありますが、それにはストーリー進行が遅くても十分に面白いと思わせるだけの情報、つまり文章や映像や音楽といった他の魅力(それも圧倒的な魅力)が備わっている場合に限られます。そして少なくとも現在のAIの創作文はそれほどのレベルにはありません。
まずはAIに立ち上がりのスピード感を修正させる必要がある。
たしかに生成された目次については僕らを期待させるものでしたが、その目次を元にして作った本文は、内容が薄くスカスカに感じられました。スピード感を上げるには次々と事件が起こらなければなりません。
また、第一章の三節を使ってこれしか物語が進まないのであれば、第二章以降も物語がのんびり(そしてあまり内容が無いまま)進んでいくことは、想像に難くありません。
つまり第二章以降も、よりスピーディーに話を展開させるよう、この時点で修正をかけておく必要があるわけです。
どうやって?
辺りに落ちている角材を拾ってAIを追い詰めるのです(だから比喩です)。
まずは今回の第一章の本文、ならびに目次「桃太郎2.3」バージョンを見て、「物語の立ち上がり」以外にも気になるポイントをざっくりリスト化していきましょう。僕の場合、ひとまず大きなポイントは以下の通りです。
物語の冒頭でもっと早く事件か謎が欲しい。
読者に冒頭から食いついて欲しいので、ここは解決する必要があります。劇的な事件によって桃太郎の出発を促せないか?
桃太郎が嫌でも出発しなくてはいけない強烈な理由も、読者を惹きつける力になります。どのようにして村人は鬼になったのか?
今回、目次から生成された本文のスカスカ具合を見ると、おそらく「村人が鬼になった理由」などAIは考えていないし、放っておくとスルーするでしょう。でもここに斬新なアイディアがあれば、物語に深みが生まれます。猿と雉はなぜ桃太郎と離れていたのか?
ここも、このままだとAIは涼しい顔してスルーし物語を書いていくでしょう。昔の仲間が別離を選んだ理由があれば、キャラクターに厚みが出ます。猿と雉との再会時に得られる新しい情報はないか?
せっかく再会するのだから、物語の引きとなるような次の展開への情報を提示させたいところです。それが「先を知りたい」という引きに繋がります。鬼ヶ島へ向かう際の具体的な困難は何か?
第一章のスカスカ具合で物語が進行すると、大した山場もなくあっさり鬼ヶ島へ到着することが予期されます。仲間がそろってからもあと2つくらい山場を欲しいところです。(となると新キャラクターも必要かも知れません)闇鬼の真の目的に「桃太郎への復讐」以外のアイディアはないか?
これはオマケ的なポイントです。現時点でも桃太郎への復讐は鬼の目的としては妥当です。しかしそこに驚きはありません。せっかくだから驚きのある目的を幾つか考えてもらい、良いアイディアがあれば利用していきたいと思います。
細かい部分をあげればきりがありませんが、ひとまずこの大きなポイントからAIにアイディアを掘り下げさせます。AIがアイディアを出してきたら、さらにそのアイディアを叩いてより強く堅くしていく。
要するに「なにかアイディア出して」「なんでそう思うの?」「どうしてそうなったの?」「それで全体と辻褄はあうの?」と、AIを丁寧に丁寧にドン詰めしていく作業です。
その過程を見て行きましょう。
AI創作の神髄。アイディアを取捨選択していく
今回は例として
「どのようにして村人は鬼になったのか?」について考えさせていきましょう。もし良いアイディアが生まれたら、物語全体を通してこの部分は謎の核になりえます。その場合は、この謎を中心にして物語の冒頭に事件を起こすことも可能でしょう。
プロンプトは
というシンプルなものでも十分機能します。
こだわりに応じて「役割」を設定しても良いかもしれません。小説家として、ハリウッド脚本家として、ボリウッド監督として、などもいいでしょう。ひとまず今回はシンプルなプロンプトで進めていきます。
どちらかというと、より重要なのは「3つ」という複数アイディアを出させる点です。これによって編集者である僕らは比較検討が可能になります。もちろん5つでも10個でも構いません。
プロンプトを入力すると、ChatGPT-4は以下のように答えてくれました。
どれも使えそうじゃないか、はじめから出しとけよ。と言いたいところをぐっとこらえて、比較検討をしていきましょう。目次のブラッシュアップの時と同様に、ここでどのようなアイディアを採用するかが、AI作家の編集者、あるいはプロデューサーとしてのセンスとなります。
今回は3番目の「鬼に変身しする桃」のアイディアを採用しましょう。桃太郎ですし、後々の関連づけに便利かも知れません。
きっとこの桃に名前があった方が、後々便利でしょう。今回の連載では可能な限りAIに考えさせ、AIに物語を書かせたいと思うので、小さなアイディアでもAIに生成させていきます。
いいねいいね! ここでは2番目の鬼源桃(きげんもも)を採用します。読み方としては(きげんとう)のほうが自然なのでそうしましょう。
この鬼源桃のアイディアが気に入ったので、せっかくだからさらに鬼源桃に関する情報を考えさせましょう。なにか良いアイディアが生まれるかも知れません。もし良いアイディアが生まれなくても、採用しなければ良いだけです。
おおお、どれも捨てがたい! やるじゃん続編先生!
この中では1番目の「鬼ヶ島発祥の果樹」に、僕は可能性を感じます。
というのも、「鬼になれなかった人間は拒絶反応で発火する」という現象が、なんとも物々しいので、冒頭で読者の関心を惹きつける事件として使えそうだからです。初期プロットにあった「村に漂う怪しい桃の香り」が、この焼死体から漂うという設定にしても悪くありません。
また鬼になった村人が鬼ヶ島を目指す、というのは村人が失踪する謎の答えにもなります。
さらに、作品の問題点としてリストアップしていた「劇的な事件によって桃太郎の出発をうながせないか?」についても、この鬼源桃の特性を利用すれば作れるかも知れません。
早速、AIにアイディアを練ってもらいましょう。
ここで「衝撃的」とあえて括弧で閉じているのは、AIに衝撃的であることに重みを置かせているからです。
なるほど。失踪と発火現象の合わせ技の3番目が特に衝撃的です。しかも犠牲者が育ての親。きび団子が残されているところもまた桃太郎出立の後押しとなります。うーん、これはなかなか面白くなってきました。
ここまでのアイディアを盛り込むことで、物語冒頭の立ち上がりの遅さを解決できるかも知れません。試しに一度、章立てをさせてみましょう。
スピード感が出て、立ち上がりがぐっと良くなりました。
しかし、こうなってくると桃太郎には「最初は冒険には出たくなかった」という前提があると、より桃太郎の決意の重みが伝わってきます。
冒険になんて行きたくなかったけど、家族が犠牲になり、どうしても行かなくてはならなくなった。
となると、今度は「桃太郎が最初は冒険に出たくない理由」を考えてもらおう……というように、AIを使ってアイディアをどこまでも深く生成させていきます。
アイディアを整理して物語に盛り込む
このように、アイディアを幾つか提示させ、そのうちの一つをさらに数パターンに分けて深掘りさせていくことで、さまざまな物語の可能性を探っていくことができます。
ある程度まで進んだら、途中でAIに物語を整理させ、編集者視点でさらに足りないところを探し、またAIを使ってアイディアをさらに出させて物語を深めていく。
AIでの創作はこの繰り返しです。
「一回の質問で、素晴らしい物語を生成する」というレベルにはまだAIにはありません。しかし丁寧に、なにより根気強く、AIとの会話を繰り返していくことで物語は飛躍的に良くなっていきます。
前述した大きなポイントから掘り始めて、今回行ったような作業を何度も繰り返してできあがった目次「桃太郎2.4」が次の通りになります。バージョン2.3と比べて、スカスカだった内容がずいぶん濃くなりました。
特に「森の賢者・シン」と「強欲な舟商人」は新キャラで、彼らが誕生するためにAIが泣きそうになるまでアイディアを絞り出させました(泣きませんでした)。
改訂版:桃太郎2の目次と、キャラクター表
また、キャラクター表も生成してもらいました。
この設定の裏には、AIで山のように生成し取捨選択したアイディアがちりばめられています。これを元に次回、AIに原稿を全て生成してもらいましょう。
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