「ありがとう」が論争になる不思議な世界
人に何かを貰ったら「ありがとう」と言う。これは人として当たり前のことですよね。これはその「ありがとう」が論争のネタとして何度も何度も盛り上がる不思議な世界のお話です。
私はクラッシュオブクランという、世界的には有名だけど日本ではマイナーなゲームに何年もハマっています。このゲームは簡単に言うと「軍隊を編成して相手の村をぶっ壊す」っていうゲームで、クランという単位のチームに所属していると仲間から援軍を貰うことができます。この援軍を貰った時にお礼を言うか言わないか、これが論争のネタになるんです。しかも「援軍を貰ったのにお礼を言わない人がいる。けしからん!」なんて単純な話じゃないところが面白い。それはこのゲームのシステムにも大きく関わってくるので、まずはそこから説明しなきゃいけませんね。
「ありがとう」にかかるコスト
このゲームは援軍を貰った瞬間に「〇〇から△△をもらいました!」というメッセージが表示されます。そして5秒ほどで消えます。どこにもログが残らないので、誰から貰ったかという大事なメッセージを簡単に見逃します。つまり、お礼を言いたくても誰に言ったら良いか分からない状態ってのが頻繁に発生するわけです。援軍のお礼を言うためには、援軍を申請したら誰かが援軍をくれるまで画面を注視し続けなければならない訳ですね。ちょっと目を離した隙に援軍が届いているなんてこともしばしば。援軍を申請したからには届くまで気を抜けません。おちおちコーヒーなんか飲んでる場合じゃないですよ。
それから、これは当たり前なんですけど、援軍ってのは誰かが送ってくれないと届きません。いつ届くのでしょう? それは仲間次第です。誰も居ない時に申請したら、クランによっては1時間経っても貰えない事だってあります。そして、肝心のメッセージは援軍を貰った瞬間にしか表示されません。ゲームを起動していない間に援軍が入ってしまうと、もはや誰から援軍を貰ったかを確認する術はないのです。
このゲームでは、援軍を誰から貰ったかを知るためには、援軍が届くまでゲームを起動したまま画面を注視し続けなければなりません。はっきり言って無理ゲーです。
お礼の強制と免罪符
こんな酷いシステムにも関わらず、クランによっては「お礼必須」をルールに掲げていたりします。ゲームのシステム上、誰が援軍をくれたのか分からないことが多いので「誰だか分からないけどありがとう」は許されると思いますが、問題はお礼をするタイミングです。
援軍を申請してもすぐに貰えるとは限りません。いつまでも待つわけにはいかないので、申請した状態でゲームを終了することになるでしょう。次に起動して援軍が入っていたら「援軍くれた方ありがとう」となります。
めでたしめでたし? いやいや、そうとも限らないですよ。
例えば昼休みに援軍を申請したとしましょう。仕事が忙しくてゲームができないまま夜の9時を迎えました。この時、昼過ぎに援軍を入れてあげた人から見ると「あいつは援軍を貰ったのに、晩になっても礼を言わない。ここは援軍のお礼必須のクランだろ?どうなってるんだ?」となるかも知れません。夜の9時にお礼を言っても「今更何言ってんの?」となるかも知れないんです。
そんな状況もあってなのでしょう。「どーせ不特定の誰かにお礼を言うんなら、もう先回りしてお礼しちゃっても良いんじゃないの?」って考えた人がいました。そうやって生まれたのが「お先に援軍ありがとうございます」という形式のお礼です。これならいつ入るか分からない援軍を待つことなく、援軍をこれから入れてくれるであろう誰かに対してお礼を言うことができます。「お先にありがとう」ブームの到来です。
援軍をあげる側の不満
こういう状況で生まれたであろう苦肉の策「お先にありがとう」は一部の人には不評でした。援軍を申請後、間髪入れずに「お先にありがとう」と言ってオフラインになる人や、申請文そのものに「なんでもOK、お先にありがとう」って書く人が現れたからです。
先ほど、システムの都合上、誰が援軍をくれたのか分からないことがあると書きましたが、インしている間は「〇〇から△△をもらいました!」が普通に表示されます。5分も待てとは言わない。30秒すら待たずに「お先にありがとう」って、それ、お礼を言う気がないよね?って話です。感謝の気持ちがこもってない「お先にありがとう」は、援軍をくれる事が大前提にあるという点を考えると、むしろ厚かましくさえ思えてきます。
お礼はしないという選択
このように、援軍のお礼は小さな不満を生み出すことがあります。1つ1つはちょっとしたイラッでしょう。でも1日に何度もイラッがたまれば、それはもうイライラです。息抜きのゲームでストレスためるなんて本末転倒。だったらお礼必須なんかやめちまえ。そう考えるクランもありました。お礼は自由。言っても言わなくても良いよ。したい人だけすれば良いじゃない。お礼自由クランの登場です。
自由万歳! 好きにして良いって気楽だね♪
でもちょっと待ってください。周りがお礼を言ってる中で、自分だけお礼を言わないってなかなか難しくないですか? 日常生活では人から何かを貰ったらお礼を言うってのは常識です。例えルールで許されていたとしても、やはりお礼を言わない人を見かけたら「普通は言うよね」とか「自由だから言わないって違うよね」とか思ったり思われたりしても仕方ないと思うんですよ。自分はそうじゃなくても、そう思う人は必ずいます。こういうところからクランの雰囲気がギクシャクしちゃうこともしばしば。
実は自由って一番難しいんです。所属するメンバーに丸投げなんですから。
たった1つの大切なこと
そもそもね、お礼なんて強制するようなもんじゃないんですよ。「お礼を言いなさい」と言われて仕方なく「ありがとうございまーす」とか返されても気分は良くないですよね。大事なのは感謝の気持ちで、それを相手に伝える手段としてお礼というものがあるんです。
お礼必須のクランにしても、お礼を言うことが目的じゃなくて、ゲームのような限定されたコミュニケーションでは感謝の気持ちを伝えることが大事だと考えているから、何もしないと伝わらないよって意味を込めて必須にしているんだと思います。心の中で(いつもありがとう)って思っていても、表面上は援軍を無言で貰いまくってるクレクレ君と何も変わりませんからね。
お礼は自由のクランだって、仲間を援軍製造機としか思ってない人とは一緒にゲームなんかしたくないはず。「お礼は言わないけど雑談盛り上げてるよね」とか「無口だけどみんなに援軍送りまくってるよね」とか、別の形で感謝を伝えたり、コミュニティに貢献したりしていれば、実はお礼の有無なんて些細なことだったりします。
「ありがとう」を伝えるのは大事。でも、その方法は「ありがとう」と言うことだけじゃない。方法はいくらでもあるから援軍のお礼問題に正解なんかなくて、答えがない問題だからこそ何度も何度も論争になっちゃうんでしょうね。
こんなしょーもないことが話題になるくらい平和な界隈のクラッシュオブクランというゲーム、やったことない方は是非試してみてください。面白いですよ〜♪
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