【腹膜偽粘液腫】4.転院と病名発覚
CTとカンファの結果を聞く
そんなわけで、日にちにして退院から約3週間後、カンファも終わって結果が出たので旦那同伴で診察に行った。この間、婦人科領域における境界悪性は卵巣がんがほとんどであると言う知識だけが身についていたのだが、医師の見解もほぼそこに集中した。ちなみに診察日(曜日)の都合で告知した医師とは別の医師に変わっていた。
医師「造影CT、検体を検討した結果、原発についてですが、まだ判明していません。超音波やCTの画像を見ても子宮と卵巣に異常はなく、子宮筋腫以外の腫瘍は見つかりませんでした。きれいです。開腹し摘出することで病気が判明する可能性はゼロではありませんが、見つからない可能性もあります。もしくは、将来的に画像や血液検査の結果で原発の診断ができるようになるまで経過観察です」
政治家を彷彿とさせるような、まさかのゼロ回答をゲットしてしまう。がんだぞ、今この間にも転移していたらどうするのだと患者として焦るワケだが、わからないものはわからないのだと素直にはっきり伝えてくれるだけよかったのかもしれない。(患者としては絶望するけど)
やはり医師も摘出した検体が境界悪性=卵巣と目星をつけてみるのだが、ここに異常がない以上、経過を観察して異常が出るのを待つか、いっそ摘出するかの二択になるという。※原発はちょっと隣の虫垂だったので、カンファレンスに他の科の医師がいたら見つけていた可能性はある。
この時点で35歳、子宮と卵巣全摘は人生における選択としてかなり重たい。しかも100%わかるならまだしもわかんなかった場合は健康な臓器とって体重が数百グラム減るだけだ。場合によっては更年期障害にも向き合わねばならない。
そんな治療方針に愕然としていると、医師から提案が出た。「ご自宅からここまでお時間かかるようなので、経過観察されるなら転院もアリです」
そう、腫瘍を見つけた総合病院は旦那の家事能力の低さを見込んで術後実家に寄生することに決めた、自宅から車で1時間超の総合病院。地元には癌でそれなりに権威の高そうな大学病院があるではないか。あっさり提案に乗り、大学病院への紹介状をお願いした。
転院 某大学病院でひたすら待つ
さて、転院である。車で2〜30分の大学病院だが、初診はほぼ紹介状の郵便屋さんで終わった。医師が紹介状を読み、診察で「こちらで検体のプレパラートを病理にかけて、カンファを実施しますね。次回の予約は2週間後で大丈夫です」
このひとことのために使った待ち時間は2時間である。さすが大学病院。診察のあと、採血やCTを追加されて受けたものの、9時に到着し、全て終わったのは15時。実はこのとき旦那と一緒に行動する時はもれなく乳飲み子を抱えており、わりと過酷だった。
後日ヘルニアでまたこの病院にお世話になるのだが、待ち時間は2時間がデフォ、1時間で呼ばれると「今日は早いですね」と医師に言ってしまうレベルである。まじどうにかなんねぇかな。
2週間後に訪問すると、今度は超音波検査を受けてからの診察だった。CT取ったんだけどな? と不思議に思いながら超音波検査を受ける。技師さんが右下腹部をやたらゴリゴリ押すワケだが、待て待て待て、待ってくれ、私はつい2ヶ月前に子宮10cmの開腹手術を受けたばかりだ。傷痕こそ避けてはくれるものの、皮膚が引っ張られるのでマジ痛い。必要な検査だから我慢するしかないんだが、後日受けたヘルニアの時も超音波検査が激烈に痛かったので、あそこの大学病院の超音波検査室はサドしかいない。
そして病名発覚へ…
痛くて辛かった超音波検査を受け、受付からすでに1時間半近く経っていた。そうしてさらに待つこと1時間ちょっと、ようやく診察である。この時には夫婦共に待つことを受け入れており、合間にレストランで昼食を済ませる手際の良さを発揮した。
「病理とカンファレンスの結果、病名は腹膜偽粘液腫とわかりました。漢字わからないですよね? こう書きます。
ホントにレアです。うちの大学病院、市内外含めてそれなりのがん患者さんを受け入れてますが、2〜3年に一度現れるか現れないかってレベルの希少がんです」
医師はもちろん真剣に伝えてくれているのだが、心の中は拍手喝采、大号泣。ようやく病名がわかった。ようやく原発と治療の話を聞ける。
「原発は虫垂で、CTだと少し見づらかったので念のため超音波検査をさっきしてもらいました。しっかり腫れてますね」
なんと、原発にもはっきり症状が出てるらしい。よかった、子宮と卵巣は切らなくて良かった!! 転院して良かった!!
「肝心の治療なんですが、ここでも続けることはできますが、専門医のいる病院が東京と大阪にあります。というかこの2か所にしかありません。年齢も若いし、早期に発見できた以上、専門医のいる病院できちんと治療を受けたほうがいいと思う」
思い出が美化されているので仕方がないが、はっきりとこうしたほうがいいという方針を言ってくれるので、別に治療を受けたわけでもないのに名医に出会ったような気分である。
現実的にはこの病院ではHIPECが受けられないため、腹膜播種のように腹膜内に飛び散ったがん細胞を取り除いて洗浄して終了になったはずだ。再発の危険性と予後を考えると、この提案は妥当かなと振り返る。
そうして一通り説明が終わり、紹介状を出すので予約入れておいてねとなったところで、質問してみた。
「原発がわかったということは、ステージとかも分かりますか?」
実はこの時点で、病気のことを職場に報告していなかった。無事に手術が終わり、職場の上司はすぐに復帰するだろうぐらいに思っていたはずである。
だが、報告する側としては原発やステージがわからないと治療方針が分からず、イコールどれだけ職場を休めばいいのかわからない。病名、原発、ステージが分かれば職場に第一報として報告するには事足りると思って聞いた。それなりに覚悟はしていた。繰り返し希少がんだと言われて楽観するほうが無理である。
「専門外だから、正しくはないと思う。ただ、ステージ3くらいにはなってしまうかもしれない。予後はあまり良くないかもしれない」
健康一家、ピンピンころりの旦那にはその意図がわからなかったようだが、私はこの時真剣に覚悟決めて、「死亡保険、中身確認しよう」と考えてました。
職場にチャットで報告
旦那にステージ3の説明をした後、職場にはSNSで報告することに決めた。個人メールだとうっかり見落とされる可能性があるからだ。SNSはその点、既読もつくので本当に素晴らしい。
さて、このとき私の上司は昇進したてのアラサー男性だった。35歳の部下のがん罹患(しかも希少がん、ステージ3)を報告する相手として適切なのか? 身内みたいな、変な発言されたりしないだろうか? というか普通に重すぎね?
検討した結果、さすがにたよりない対面で伝えられない以上、かなりストレスになりそうだと思い、50代で奥様は看護師というステータスを持つ責任者に報告することに決めた。返信には「職場のことは気にせず、身体を大切に。ご家族ときちんと話し合ってください」ときて、あー、この人に報告して良かったなーと思った。アラサーにこの重みはない。
というわけで病名発覚まで辿り着きました。長いnoteにお付き合いありがとうございます。前回ひたすら暗かったので今回は希望を見出すとこまでかけてよかったです。希望? どこがだよ! という方は公開済みの以下のノートを見てください。
次は大阪に行かなかった理由、職場との面談など、どちらかと言うと雑談ベースのお話です。