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2024年2月下旬

映像に「愛してる」という文字をたくさん載せる仕事をした。あまりにも愛してるという文字を見過ぎたせいで、次第に愛してるのかもしれないという気分になってきて、納品した直後の今はもう完全に愛してると思う。

フリーレンがいい。という話はもうみんながしているのでいまさらする必要はないのだけれど、フリーレンが良い。
とても限定的なある一面において、ミシェル・ウェルベックの「素粒子」と似ていると言えるかもしれない。

フランス人の前でウェルベックの話をすると露骨に嫌な顔をされる(といってもサンプルは2人だけだが)。
一人はペド野郎と罵り、もう一人はシャルリー・エブドの事件直後の彼の言動を批判した。

後者のフランス人ことロナン・マッソとはアイルランドのゲストハウスで出会った。偶然を信仰するあまりわたしたちは連絡先を交換しなかったが、それゆえか彼の言葉のひとつひとつを強烈に記憶している。

旅の計画を立て、自分でチケットを買い、空港や駅、バス乗り場や街角で迷いながらここへ来たなら、君は旅人で観光客ではない。と彼は言った。

あまりにもその旅において自分が聞きたかった言葉そのものだったので、ロナンはわたしの願望が作り出した幻影なのではないかとすら思った。

全然2月下旬の話をしていなかった。ありがたいことにバタバタと色々な仕事があり、なかなか秩父の部屋に荷物を移せないでいる。好きな人は音信不通で、わたしは1日に何度も郵便受けをのぞきに行く。前者のフランス人ことルイがパリから帰ってきて、シェアオフィスの惨状に眉をひそめている。友達のやっているバーで夜中まで飲んで、新宿から杉並まで青梅街道をひたすら歩いて帰った。マセラティの試乗会帰りの男に車何に乗ってるか聞かれてはぐらかし、これまでの仕事をいたく褒めてくれる人に会って恐縮した。駐車券を失くすとだるいということをいまさら知り、雪が降って、雨が降っている。映像に愛してるという文字を載せた。わたしが映像に載せた愛してるは3フレーム毎に三原色がわずかにズレるので、わたしの愛してるは微かにエッジが七色に光る。

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