君が今から歩く道
A席かE席か、それが問題だ。
単身赴任を始めてから、新幹線を予約する回数が格段に増えた。
それなりに長い時間を車内で過ごすので、できれば人の出入りを気にしなくていい、窓際の席を確保したい派である。
定石は3列シートの窓際、A席だ。列車が混んでいないときは隣の席、つまり3つ繋がっている席のうち真ん中が空席となることが多い。隣人に荷物がはみ出していないか、肘がぶつからないかを気にせず過ごせるのは大きなメリットだ。
しかし、列車が混雑するタイミング――金曜の夜とか、連休中とか――は、先ほど述べたA席のメリットを享受できないこともままある。3席すべてが埋まってしまうのだ。そういった場合はむしろ、真ん中に座った人が窮屈そうにしているのに対して少し申し訳ないような気持ちになったり、化粧室に立つにも二人分の膝とシートの隙間を乗り越えていかねばならなかったりと、気を遣う場面が増える。隣に二人連れが座る場合は、聞こうとしなくても二人の会話が耳に入ってきて、ちょっと気まずい思いをすることだってある。
そうなるとE席、つまり2列シートの窓際のほうが望ましい。
今から予約する列車は、果たして混みあうだろうか?
それを踏まえて最適と思われる席を予約するのが、ちょっとしたお遊びのようになっている。予想が当たれば少し得した気分になるし、外れればやや肩をすぼめて座席に収まる、ちょっとした賭けだ。
そのお遊びの流儀に則れば、先日乗った新幹線での賭けは大外れ――のはずだった。
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