LIVEに行きました
自分の大好きなアーティストのLIVEを見に行った。人生で初めて音楽を生業としている方のLIVE。コンビニでチケットを発券して、ホテルを予約し、高速バスに乗って向かった。
迷路のように入り組んだ駅を早足で歩く大勢の人に驚きながら、1人電光掲示板を頼りに歩く。こんなに難しい街に対応して生活する人に拍手。
客に向かって「はじめまして」と言った時、疑問を持ってしまった。私は勘違いをしていたみたいだ。
私が何度も見た事のある顔、聞いた事のある声なのに、私はこの人に今日、初めて会ったのだ。そのことが頭から抜け落ちていた。「憧れのアーティスト」として彼を神格化していた自分を恥じる。マスクの下で、心の中で言葉を返す。はじめまして。
演者としての礼儀なのかもしれない、当たり前なのかも知れないが、私たち客を人としてライブハウスに向かい入れるその姿が美しく思えた。ふと、行きのバスを降りる時、お礼を言い忘れたことを思い出した。
何度も目に涙を浮かべた。目の前で歌を歌い、ギターを弾く彼らの存在。ライブハウス特有の空気感。両耳を痛みつける彼の声。今日という日が現実になった事への感動。
しかし不思議と頬に涙は流れなかった。今回のLIVEは100点だと思えなかった。自分が望む歌が聞けなかった事が原因だとすぐに分かった。
私は彼らをまだ神格化していると、私を満たす存在、として彼らを見ていた事に気がつく。彼らがどんな思いでこのセットリストを組んだのかも知らず、どんな思いでLIVEを決行したかも知らずに。本当に情けない。
音楽は魔法ではない。音楽は誰の明日にもなれない。
ただ、私は彼の言葉で目を覚ます。彼が彼自身に入れた喝は、同時に私の胸を殴る。彼の言葉に学び、私は何か気付かされる。正面から逸れる目線を直す。今までも、これからも。
ありがとう。
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