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思わぬ来客〜傷を負った白い鳩〜

2024年8月下旬

これは動物園を訪れたレポートではなく、動物が我が家を訪れた際の不思議な体験の記録である。忘れぬうちにと思いつつも、日本への帰国に向け怒涛のような日々を過ごしていたのでゆっくり想いを馳せる時間が今日まで取れなかった。これは機内で綴っている。

8月も終わろうとしていたある日の出来事。日当たりの良い部屋でカメラを抱え、染色した糸を撮影していたところ、思わぬ来客が窓辺に現れる。真っ白いきれいな鳩。うわぁ。最初はうれしい気持ち。よく見るとアルビノかもしれない。大きな腫瘍か傷かデキモノのようなものが羽にある。一般的なグレーの鳩はときどき飛んできて、人の気配ですぐ飛び去っていくということは今までも度々あったが、白い鳩の訪問は初めてだったので、カメラをとっさに鳩に向ける。

突然目の前に現れた白い鳩

窓の外にある室外機の上からその白い鳩はこちらを見ている。かなり見ている。私はカメラのモニター越しに見ている。鳩はイケアのオランウータンのぬいぐるみを見ている。すごく見ている。ガラス窓の真ん前まで来て、部屋の中をのぞいたりしている。あまりにもその場から動かない上、私が近づいて観察していても物おじしない。誰かに飼われている鳩が脱走したのだろうか。この日は炎天下。稼働中の室外機の上はかなり熱い。日陰でもなく、直射日光が容赦なく鳩に当たっている。それなのに一時間経っても、そこから動かず、こちらの様子を伺っている。

窓際のオランウータンを凝視する鳩
部屋の中を覗く鳩
わたしのこともじっと見てくる鳩

野生の世界はきっと想像をぜっする厳しさがあるに違いない。なぜか涙が出てきた。そのうち鳩はおこっちるのではないかと思うほど室外機の端っこで目を瞑って休み始めた。小一時間は過ぎていた。待てど暮らせど飛んで行かない。飛べないのではないか?この鳩は助けを求めているのだろうか。もしかしたら誰かが探しているかもしれない。IAM(野生動物や飼育動物などの政府管轄局)に電話して相談することにした。写真を送って、対処が必要そうだったら折り返してくれるということだった。

猛暑の中フル稼働の室外機の上で休む?鳩

両親にも映像を送って相談した。怪我していて脱水症状になるから水をあげな、と言う。直接コンタクトを取らないように、お皿にに水を注ぎ室外機の上に置こうと、そっと窓を開けようとしたら、鳩は起き上がる。その拍子に設定していたカメラの三脚のバランスが崩れ、カメラが窓ガラスに当たりそうになったのを必死にくい止めるあたふたしている室内の私にびっくりして鳩は飛び去って行った。よかった。飛べた。撮影した映像を確認すると、二時間もそこにいた。鳩は弱っていたのだろうか。ただ休んでいたのだろうか。わかるすべはない。野生は厳しい世界。人間も老いと共に病気で亡くなるが、野生生物もいっしょ。あの鳩がまだ先が長いことを祈り、白い鳩のジンクスはよくわからないのであまり深く考えずに、この日の日記は終わりにしたい。

今頃どうしているだろう…


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