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シリーズ男と女の風景1〜文豪のプロット〜【全11話】
〜相互理解の瞬間〜
『好きなら、ちゃんと言うて』
え〜っ⁇
思わず口ごもる。
多分動揺が隠し切れていない。
すると今度はケラケラ笑い出す。
『ほんまわからんわ、東京者は』
と言って肩をすくめる。
俺はちょっとムッとして見つめる。
すると彼女も急に真顔になって見つめ返してくる。
しばし逡巡。
(よくわからないのはどっちだよ…)
やがて彼女はだまって瞳を閉じる。
俺は意を決して彼女の唇を奪う。
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〜夢のためにサヨナラしたアイツ〜
半端な夢の為に使うだけ使い続け、
いつも無言でぶっすり奥まで挿れて、
散々熱いモノを流し込み続け毎晩鳴かせた。
正直今の俺はアイツのお陰で在るんだと思う。
なのに、最近は全く何処にも連れて行かないし、見向きもしなくなった。
俺、変わってしまった。
アン直に生きてる…
俺は古いエフェクターケースを開けて呟いた。
『ごめんな、コンプレッサー』
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〜浅草〜
ちっちゃな遊園地のちっちゃなベンチに座って、
『次、あそこに行こう!』
って息を弾ませキミが言うから楽しくなる。
夕暮れ頃にゴンドラに乗ってボクも真似する。
「次、あそこに行こう!」
指差したのは劇場の屋根の向こうに見える外の看板。
"HOTEL"
って字を読んでキミはクスリと笑う。
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〜勇者マジンガー②〜
さやかも年頃だ。
娘という贔屓目が無くても綺麗な方だと思う。
将来は甲児君と一緒になって欲しい。
しかし娘によればいっこうにつれない態度だと言う。
ぐぬぬ、何が足りないのだ。
アフロダイ@を改造し胸部にロケットを2基装備してみる。
うむ、これでいい。
思案の末に足りないのは「萌えの要素」だと気付いた。
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〜愛情に変わる感情〜
『多分、無理だからもう止めた方が良いよ』
そう声をかけてあげたいが、きっと傷付けてしまう。
あんなに頑張っているのに僕には出来無い。
だったら、せめてずっとそばにいて励ましてあげる存在になろうと思う。
ふとカガミに映った自分の顔をのぞき込んで驚いた。
なんだ、僕を見る彼女とまったく同じ表情をしているじゃないか。
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〜ハードボイルドに生きる〜
「悪いけど後にしてくれ…」
オープンカフェで興奮した様子で近寄って来た可愛子ちゃんを無視する。
この仕事は一瞬の油断がクライアントの危険を招きかねない。
訓練はとても長く厳しい。
そして着任後の危険もトップレベルだ。
実際ハード過ぎる仕事だと思う。
報酬?
まあ、なんとか食べるのには不自由しない程度かな。
でもね、目の不自由な人間の役に立つ本当にやり甲斐のある仕事なんだ。
犬冥利に尽きるよ。
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〜売れる男性誌の作り方〜
【BARで唇を奪う必殺テク】
《最初にバーテンダーに頼みレモンスライスの上にオレンジビターズを数滴垂らします。
次に、
『酔い難くなるから』
と言い含めてこれを勧めます。
すると彼女は酸っぱさのあまり目を閉じて唇を突き出します。
タイミングを逃さず素早い動作でくちびるを奪いましょう。躊躇は禁物です》
書き終えると女性ライターはそっとノートパソコンを閉じてその日の仕事を終えた。
あとは来週発売のホットドックプレスに掲載予定のこの記事を、どうやって草食系の彼に読ませるかが問題だ。
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〜ドライブの目的〜
ドライブの目的はいつも秘密だ。
この日は神奈川県にある山間の清流を囲った釣り堀。
彼女は始めは文句たらたらで渋々竿を振る。
ほら、引いてるよ。
『きゃーっ!どうすればいいの?』
久しぶりの君の嬌声。
ほらね、来て良かっただろ?
塩焼きをパクりと上機嫌。
『釣れると面白いのね!』
うん。
どうやら僕の方も釣れたみたいだよ。
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〜花だけが意味を持つわけじゃない〜
いつも明るくて笑顔の彼女が今日はなんだか元気がない。
ちょっとだけ心配になって、
「どうかしたの?」
って訊いたけど何も答えようとしない。
すると何を思ったのか突然キッチンに向かいあわただしそうに何かを作り始める。
『ティラミスよ、さあ、食べて〜』
どこか不自然に笑う。
女性って本当に何を考えているのかさっぱり分からない。
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〜世界一幸せな結婚生活〜
床屋の鏡に映る真新しい軍服を着た若い男。
やはり新しい白いブラウスを着た女と写真屋で撮影してから慌しく街で一番の洋食店で食事をする。
食事中に男は女の真っ白なブラウスが料理で汚れてしまうのでは?とさっきからそればかり気にしてる。
すると、
「胸ばかり見ないで下さい‼」
と言われ男は顔が真っ赤に。
すると強く言い過ぎた事を後悔したのか、女は恥じらいながらもしっかりと、そして真っ直ぐに男の瞳を見て言う。
「すぐに好きなだけ見せて上げますから‥」
仏壇の写真によく似た2人のたった一日だけの世界一幸せな結婚生活。
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〜文豪のプロット〜
『おはよう、あら…眠いのね?』
馬鹿にするな、たまたまアクビをしていただけだ…
毎日通りすがりに話し掛けてくる少し馴れ馴れしいが美しくてやさしい女。
ある日、彼女の泣き腫らした顔。
出来るだけ優しく声を掛けた。
『ありがとう、優しいのね』
恐る恐る手を伸ばして触れようとしてくる。
仕方ないな、今日は少しだけ触らせてやるか。
おっと惚れちゃいけないぜ。
人間は嫌いじゃないけどなんせ我輩は猫である。
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シリーズ男と女のいる風景1
〜文豪のプロット〜 完