夏になって歌え。
セミたちが最後の力を振り絞り
暑い、暑い夏を唄っている。
「ねぇ、お母さん。あの羊かん賞味期限大丈夫かな?」
「まだ、大丈夫やが」
「ねぇ、叔母さん。あのフルーツゼリーどうなると?」
「精霊流しの時に持って行くんやなかろうか」
勿体ない。勿体ない。
流されてしまう前に
手に入れなければ。
きっと、これは子どもの性だ。
お線香の香りが
私の心に決断せよ、と
伝えてくれるのだ。
「お母さん!あの羊かん食べたい!」
「ばぁちゃんに聞いてみらんね」
「ねぇねぇ、ばぁちゃん?あの羊かん食べていい?」
「仏様に聞いてみらんね」
兄にロウソクへ火を灯してもらった。
鈴(りん)を鳴らし、手を合わせる。
「仏様、ひーばぁちゃん、先祖の皆さま。あの羊かんを食べて宜しいでしょうか?」
一生の願い事のように
私は念じた。
「ばぁちゃん!仏様が食べていいって!」
「そしたら、冷やして食べーのぉ」
私は、今でも羊かんが大好きだ。