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spinel3
色彩の教科書(26)黒の事件、エピソード
黒の持つ額縁効果
黒には、イメージを連想させる効果や、重さを感じさせる効果以外にも、凄い力がある。これは、黒で囲まれたものを、ぎゅっと引きしめ、こちらに迫ってくるような印象を持たせる効果だ。これは黒の「額縁効果」といわれるもので、私たちの身の回りでも、様々に応用されている。
例えばテレビ。量販店に出かければ数十種類のテレビが並べられているが、ほとんど全てのテレビが黒い製品だ。
和食によく登場する黒い食器も黒の額縁効果をうまく利用した例だ。
黒いお皿の上に置かれるお刺身。ここに補色の緑でさらに際立たせれば、もうこれだけで料理が成立している。これも、黒が真ん中にあるお刺身に額縁効果を与え、こちらに立体的に迫ってくる印象を持たせているためだ。
また、色と重さのトピックスでもお話したが、黒は色の中でも最も重い印象を与える色だ。つまり黒で囲まれたものは、立体的に迫ってくる上に、重く感じる。人間は重いものは高価なものと感じる傾向がある。これをうまく利用しているのがお弁当だろう。高い値段のお弁当は、もちろんその内容も違うのだろうが、それをより効果的に伝え、値段の「高さ」を感じさせるために、黒いお弁当箱が使われることが多い。
お正月に欠かせないおせち料理も同じ効果で高級に見せている。様々な食材が、黒枠によってぎゅっと引き締まり、高級感を持ってこちらに迫ってくる。お箸をつけるのをちょっとためらってしまうのは、きっとこの額縁効果の影響によるものだろう。
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