ヤメル講座 (13) ギャンブルをヤメル
実は儲からない
ギャンブルの仕組みを知っていますか?
ギャンブルにハマる人に共通するタイプ
2兆7591億3807万円。これは、平成19年度JRAの勝馬投票券収入の金額です。まるで、小さな国の国家予算のような数字……。これすべて、みなさんが競馬を楽しんだ上で、胴元代(どう もと だい)も含め、JRAに納めた金額なのです。
胴元料は、売り上げの25%、5400億円強。この割合に関しては、ほかのギャンブルも同様です。なるほど、これだけ納めていれば、「公営」ギャンブルが金輪際、法律違反などにはならないはずです。
確かに、ギャンブルはひどくおもしろいもの。負けたときに悔しい反面、レース中のドキドキ感、勝ったときのうれしさは、大人たちにとって、ほかでは体験できない種類の感覚です。しかし、このJRAの収入を見ただけで、いかに多くを胴元にとられ、残りわずかな部分をおなじファン同士で取り合っているかを、あらためて実感させられてしまいます。
わかっていながら、やめられない……そんな人が多いからこそ、ギャンブルが成立しているのでしょう。
ギャンブルにハマる人、続けている人には、2、3共通のタイプがあるようです。
・勝ち続けている人(めったにいない、ほんとうにまれなタイプ)
・勝ったときのことだけ記憶している人(勝った瞬間にリセットがかかるタイプ)
・とにかくギャンブルという時間を過ごすのが好きな人(家にいても落ちつかないタイプ)
もちろん勝ち続けている人に、ギャンブルはやめたほうがいい、とはとてもいえません。次に、お金は儲からないかもしれない(その確率は限りなく大!!)けれど、楽しさのためならそれでもかまわない、という人。きっとそんな人に対しても、ギャンブルをやめることをいくら進めてもムダでしょう。
それでも、ほんとうに自分は楽しんでギャンブルをやっているのか? という疑問を一度だけでも、持ってほしいのです。まわりの人が楽しそうにやっているから自分も何となくやっている、もしそんな惰性のギャンブルなら、なるべく早い時期にそこから足を洗うべきです。
何せギャンブルには途方もなく、時間や金がかかります。その上で残るのは、勝った瞬間の遠い記憶だけ……お金はまず、残りません。
「儲けたい!」ならやめるべき
当然のことをあらためていうようで恐縮ですが、儲けようと思った人はギャンブルをやるべきではありません。もともと25%も取られたあとで配分しているのだから、儲からない仕組みになっているのです。それでも、ギャンブルをやって儲けようと考えるなら、最低限ギャンブルを楽しんではいけません。
ギャンブルでほんとうに儲けようとしたら、1日十数レースのなかから、過去の実績、レース予想などを何度も行なった上で、たった数レースに賭けること。確率の低い大きなオッズではなく、それこそオッズが1・2倍だろうが、そこに狙って“投資”していくこと。それでも当たる確率は、半分程度でしょう。しかも、リスクは一般の投資の1000倍はあるのではないでしょうか。そのリスクを踏まえて、2割程度の利益はもらえるかもしれません。
当たる確立の高いレースは、強い馬の出てくる華やかな(楽しい)レースではけっしてありません。強い馬が多く走るレースは、その分確率が下がります。それよりも、だれもあまり興味を持たないような地味なレースを選ぶのです。
たとえば、大本命に1万円賭けても、2000円の利益。ふつうの客なら、そんなことなら“穴”に! とつい遊びたくなるレースです。そこで100万円を投資して、120万円を得る。そこまでやって、利益を得る。それが、ギャンブルで儲けるための、ただひとつのスタイルだといいます。しかし、そんな楽しくもないギャンブルなんて、ふつうの人はまずやりません。
こうした“確実な利益”を狙っている「プロ」が持っていく利益を考えたら、「シロウト」が“確実に儲からない”のが、ギャンブルなのです。レースを楽しんで、あまり調べもせず、出目(で め)も買ったり、しかも馬相手にロマンまで感じて……といったら儲かるほうが、どうかしているというべきかもしれません。
とはいっても、計算の上で儲からないというしくみを理解して、やめられるような人は、そもそもやめる努力など必要としないでしょう。現在もギャンブルを続けている人の大半は、儲からないと知っていて続けている人ばかりなのです。
ギャンブルをしない期間を作ってみる
しかし、少なくともまわりの流行りに乗って、「ギャンブルに向かない」のに、惰性でギャンブルを続けている人、たとえば、次のような項目に当てはまる人は、早めに足を洗うことをおすすめします。
・出目で買う人
・見(ケン)(予想はするけれど購入せず、そのレースは観戦だけに留めること)ができない人
・負けレースをあとできっちり反省しない人
・1人でギャンブル場に出かけない人
・お金をつぎ込むとき、負けたときのことも考えてしまう人
こんな人は、儲ける、儲からない……を抜きにして、そもそもギャンブルに向いていないタイプ。向かないだけあって、そこそこ楽しんだ経験はあっても、ほんとうに良い思いはしたことがないはず。これは、考えようによっては幸いなことなのです。そんな人にとってギャンブルは、代わりがいくらでも存在する多くのなかの、楽しみのひとつに過ぎないからです。
できることなら、無理矢理にでもギャンブルをしない期間を作ってみましょう。意外とあっさり、ギャンブルの魅力から解き放たれるはずです。“真の”ギャンブル好きほど、ほんとうは好きでなかった自分に気づくことでしょう。
この先、惰性で続けたとしても、けっして“すごく”楽しい思いはできずに、かならず終わります。そんな時間の浪費はせず、ほかにもっと“向いている”ものを探すべきです。しかし、それでよけいギャンブルのことが頭からはなれない! というのでは、かえって困ります。そんな人には、こんな方法をおすすめしたいと思います。
ギャンブルの最大の魅力は、お金を賭ける、ことでしょう。その過程として、馬を眺めたり、自転車をこいでいる人を応援したりしているわけです。どんなに予想や推理などを楽しむといえども、一銭(いっ せん)も賭けていなければ、ただの馬や人の徒競走。お金を賭けられない自転車の世界選手権が、何の面白味もないのと同様です。
たとえれば、醤油(しょう ゆ)をつけない刺身のようなもの。どんなに上等なトロだろうと、おいしさは何分の1、下手をしたら食べる気さえ起こらないかもしれません。
それならば、ギャンブルとお金の関係を変えることで、ひとつ“やめる”ための突破口がありそうです。
簡単にできる脱ギャンブル法
たとえばタバコをやめるのに、パイポのお世話になるような方法です。
自らが胴元になって、まず、自分の銀行口座に10万円を入れておきます。都合のいい話ですが、それはもう他人のお金だと考えること。奥さんに預けておくのもいいかもしれません。
次に、通常と同じように予想を行ないます。そして、馬券や舟券を買うつもりで、購入代金を封筒などに分けて置いておくこと。勝った場合には、自分の銀行口座の10万円から、同じ配当を受けます。そのお金で飲みに出かけても、もちろんかまいません。反対に負けた場合には、そのお金を最初の10万円にプラスしてください。
たったこれだけのこと。勝ったら手元のお金が同じように増え、負ければ投票した分だけ、手元からお金が離れていくのです。
その結果は、あら不思議。まずたいていの人が、実際に公営ギャンブルに投票したときと同じ感覚を味わいながら、貯金が増えていくのです。まず、増えます。このシステムを続け、貯金を増やすもよし。胴元のカラクリがわかってシラケてしまうのも仕方ありませんが、子どもだましのようで意外に効果が高いので、ぜひお試しを。
もう1つ、弱いタバコに徐々に代えていって、抵抗が弱くなったところでやめる、といった種類の脱ギャンブル法もあります。
つまり、掛け金を下げておくのです。1レース100円。当然、勝ったとしても儲けは微々たるものですが、実際にお金を賭けないでレースを観戦するのと比べたら、それこそ雲泥の差。慣れてくれば次第に、それこそ1万円、2万円賭けたときと変わらない気持ちで、レースを観戦することができます。一方、当たったとしても、そのあとの「大きく儲かったゆえの“あぶく銭感覚”の遊び」はありません。すると、なぜかギャンブル自体が、つまらなく思えてくるから不思議なものです。
何より、ギャンブルの魅力の大きな部分にはレースそのものでなく、そこに付随する“いい思い”があることに気づくことです。
さらに、ギャンブルの収支計算をきちんと記録しておく、という方法もあります。
ギャンブル好きの多くは、なぜか過去に負けたことや金銭的にこうむったマイナスを、次に勝った瞬間、「なかったことにする」特技を持っているのです。それまで度重なる金銭的苦労があっても、きれいに忘れてしまいます。だから人間、ツライことがあっても生きていける、といえなくもありませんが、これだけは忘れてもらっては困ります。
ここはひとつ、「ギャンブル収支手帳」をきちんとつけるようにしましょう。収支を記録して、しっかり儲かっている場合はいいでしょう。何もやめる必要はありません。
しかし、それ以外の大半の人は、収支を目のあたりにすると、かならず「疲れ」「むなしさ」「苦しさ」「焦(あせ)り」「不条理」などの感覚におそわれるはずです。
「大の大人が1日遊ぶのだから、多少の出費は仕方がない」などといっていられない現実に気づくことでしょう。「車が買えたのに……」「旅行に行けたのに……」そんなむなしさも、“やめる”ための大切なキッカケになってくれるのです。