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なぜ、未亡人は美しく見えるのか? Chapter 1  世の中は「色」仕掛けに溢れている(5)

落ち着かない部屋の色は?

部屋はやっぱり白い色?

「自分が過ごす部屋を作るとしたら、どんな色がお好みですか?」
こんな質問をされたとします。あなたならどのようにお答えになりますか。
「大人の感じのする黒かな。あるいは、情熱の赤もいいかな」
こんな方はまずいらっしゃいません。
いつも過ごす部屋の色です。やはり落ち着いて、飽きがこず、清潔な感じがして、開放感があって、もちろん明るい色。たいてい、こんな当たり障りのない、それでいて欲張りでもある選択肢となります。
しかし、具体的にそれは何色なのでしょう。実際に色を決めるとなると、これはなかなか難しい問題です。先ほどの条件をすべて満たす色…、そう考えると、やはり「白」かな、と思えるのですが。
実際、インテリアのプロの方々が、これから家を作るお客様に、部屋の色に関する要望を聞くと、やはり多くの方々が「白」と答えるといいます。
なるほど、白は清潔感があって、明るく、もちろん飽きもこないでしょうし、なにより新しい部屋が、汚れ一つない白一色。そこに差し込む朝の明るい光。理想の部屋の環境のようにも思えます。
しかし、お客様の話を聞いたインテリアのプロの方々。他ならぬ施主の要望ですので「それでは白で壁紙を統一いたしましょう」ということになるのか、というと実は決してそうはならないこと。
「なんで白じゃだめなの? 私、白い色が好きなのに」
「リカちゃんの家みたいな明るい感じの白。部屋をそんな色にするのが私の夢なの。できれば家具も白で統一したいんです」
と、どうしても白にこだわるお客様方には、次のようなお話をその都度差し上げるといいます。
「白は部屋を狭く見せます。白は、暮らしていくうちに圧迫感、疲労さえ感じる色なのです。そこに白い家具など置こうものなら、それこそ疲れに家に帰るようなものですよ」
意外です。明るさ、清潔感の象徴のような「白」が人を疲れさせる色だったとは。今まで素晴らしく明るい好青年だと思っていた人が、実はとっても悪い人、そんなふうにいわれたような感じです。
しかし、なぜ白が人を疲れさせるのでしょう。そもそも、すでに身の回りにいくらでも白い色の壁や家具をふんだんに取り入れた部屋があるようにも思います。病人の回復、健康を考える病院の壁だって白だったような記憶もあります。
しかし、実は、私たちが「白」と思い込んでいる壁や天井などの色は、本当は白ではありません。
手元に真っ白な紙などあるようでしたら、自分が「白」と思っている壁などに当てて比較してみるのもいいでしょう。
そのほとんどが、「白」と思わせながら、実は真っ白ではありません。アイボリーがかっていたり、オフホワイトといわれる、真っ白ではないやや黄色がかったような色が使われているはずです。あるいは、わざとデコボコした素材で、細かい影などを作ったりしています。
実は「白」は、膨張する色。つまり部屋を狭く見せてしまう色の代表選手なのです。

すぐに役立つ色の差の判定術

ほんの少しだけ、色の専門的なお話を差し上げます。
色彩の世界では、色の特長を判断するのに3つのチェックポイントが使われています。
●「何色」をしているのか?
●その色の「明るさ」は?
●その色の「鮮やかさ」は?
「何色」というのは、もちろん「赤」「緑」「青」など色そのもののことです。
「明るさ」順に並べる色の分類方法が明度です。白が一番明るくて、黒いが一番暗い色です。
「鮮やかさ」で分けるのが彩度です。白はもっとも明るい色ですが、もっとも鮮やかな色ではありません。また、同じピンクでも、より鮮やかなピンクが「ショッキングピンク」と呼ばれています。
この前者、色の「明るさ」の基準で見たときに、一番明るいのが今回の主役「白」なのです。対極にある一番明るさが低い色が「黒」になります。
では、この色の明るさ(明度)の違いは、人間にとって、どのような差になって現れるのでしょう。
ここでポイントとなのが、色の明るさによって異なる光の反射率です。
人が、その色を明るいと感じるのは、つまり、同じ光を当てて、より多くの光が反射してくるからです。
つまり白い色は、数ある色のうちで一番色を反射する色。普通、人が落ち着ける心地よい反射率は60%を超えない色といわれていますが、白にいたっては実に88%。
つまり、眩しいくらいの光が常に跳ね返ってくる状態にあります。
これでは疲れて落ち着かないのは当然のことです。この落ち着かない白い壁の色の中に、さらに、お客様の要望通りの白い家具を置いたら…。常に落ち着かなく、色に四方から圧迫されるような部屋の出来上がり、となってしまいます。
しかも、明度の高い色は、同時に膨張色でもあります。白は、こちらに迫ってくるように感じてしまう色なのです。つまり部屋の四方が膨張し、狭く感じさせてしまう色です。
ということは、落ち着かなくて狭く感じる、居心地最低の部屋が出来上がってしまうことになります。
もし、あなたが過去に、白い壁、白い家具の部屋に立ち入って、なんだか非常に落ち着かない思いをされたことがあったとしたら、それは単に「場違い」な感じばかりでなく、こうした色のせいだったということです。
さて、先ほどの壁の色の話。
白いと思っていた壁もよく見たら、少し黄色がかっていたり、さらに、細かいデコボコが壁紙の施されているのは、これもすべて、人間を疲れさせる反射率を下げる方策だったのです。


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