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変な人 (23)新宿2丁目、消えたカツラ男

 今回、「変な人」本人は登場しない。
 変な人と思しき人物が残していったものをご紹介する。

これが落とし物。カツラ、である。

 カツラ。
 発見場所は新宿2丁目。
 新宿1丁目での用事を済ませ、新宿3丁目の駅を目指して歩いているときのことだった。
 2丁目の公園を過ぎたあたり。歩道に、黒い物体が落ちているのが見えた。
 最初は、人に慣れた黒猫が道端で昼寝中、あるいは誰かが落としたふかふか襟巻かと思った。
 しかし近寄ってよく見てみると(怖いので触らなかったが)、それは間違いなくカツラだった。
 いったい、どのような状況で、カツラがここに放置されているのか。
 新宿2丁目の中心となる交差点からすぐの歩道。2丁目に特別な思いはないが、それでも昨晩(たぶん)このカツラの持ち主に起こったドラマをどうしても想像してしまう。
 普通に歩いている状態でカツラを落とすということは考えにくい。
 たぶん一度は歩道に倒れる、寝る、あるいはカツラが落ちてもわからない状況にあったということが推測される。
 つまり酔っぱらっていたのではないか。スナックが立ち並ぶ界隈のど真ん中だし。
 だがカツラは(よくわからないけど)酔って頭をぐらぐら振るくらいでは取れない構造になっているはず。
 取り外すためには、意図的にそれを行う必要があるだろう。
 本来、頭と一心同体であるはずのカツラがここにある状況として考えられるのは、

・「もうウソの自分は嫌だ!」と、べりっと(こんな音がするのかわからないけど)はがして捨てた(酔ってるので)
・泥酔して地べたに寝ていて、カツラが強く地面にこすれてとれる。しかる後、身体の方だけが、誰か(たぶん男性)に連れ去られてしまった(事件?)

という二つのパターン。
 どちらにせよ、カツラの所有者は意図せず人生の大きな曲がり角を曲がってしまったのではないか。
 次の日、同じ場所を通りかかったが、そのカツラはすでになくなっていた。
 誰がどこに持って行ったのだろう? ちょっと気になる。


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