ヤメル講座 (9) 入場料を払うのをヤメル
入場料を払うのがあたり前と、
思っていませんか?
入場料は何のためにある?
“やめる”楽しみを覚えてしまうと、いろんな形で払っている入場料も、一度“やめる”ことを前提に考えてみたくなります。
休日などに、私たちは何か目的を持って出かけるたびに、まずかならずといっていいほど払っているのが、この「入場料」。
遊園地、動物園、水族館、スポーツ観戦、あるいはテーマパーク……入場料も500円から2000円、3000円とさまざまです。
ところで、素朴な話、私たちはなぜ、入場料を支払っているのでしょう?
「楽しませてくれるのだから、それに見合ったお金を……」
「相手も商売でやっているのだから、当然必要」
「特別なところに入るお金だから」
そのとおり、そういった意味では当然のことです。
しかし、さらに考えてみると、商売でやっているところに入場料を払うということには、いったいどんな意味があるのでしょう?
おそらくそれは、言葉にしてみると“確実性”というあたりに落ちつくのかもしれません。入場料を払うことで、その対価として楽しみやサービスに確実性を求めているのです。
つまり、もし入場料を払ったのにつまらなかったら、“怒れる”権利を得ていることにもなるわけです。
では、その逆に「タダ」の場合だと、どんなことになるでしょうか?
代表的な感情は、「タダで楽しませていただいているのだから、たとえつまらなくても文句はいえない」「楽しめたら大ラッキー!」というあたりでしょうか。
いずれにせよ、非常に謙虚なものになってしまうのです。
しかし、そこは心の持ちよう。そこはちょっと気持ちを切り替えて、
「わざわざ出かけるんだから、タダで楽しませろ!」
「税金払っているんだから、そのくらい用意しろ!」
「楽しませてくれたら、将来、商品の購入を検討してあげてもいい!」
そのくらいのずうずうしい気持ちを、ぜひ持ってほしいのです。そんな視点で見渡してみると、世のなかには「タダ」で楽しめる施設やイベントが山ほどあることに気づきます。
公共の施設を見直してみよう
たとえば、動物園や水族館。本来、エサ代や飼育代がかかるはずのこうした施設に、無料の場所があります。施設の例はあとにも多少記しておきますが、無料で楽しむには、まず公共の施設がおすすめです。
東京の板橋区にある「板橋区立こども動物園」(板橋区板橋3-50/TEL03-3963-8003)。ごくふつうの公園のなかに、小動物コーナーや立派な水族館があります。
無料だからとバカにしたものではありません。数十種類のめずらしい魚が大水槽で泳ぎまわる水族館は、相当のレベル。さらに、小動物コーナーではポニーやヒツジ、ヤギ、モルモットなどが見られるのはもちろん、直接触れて親しむことができます。小さな子どもがいる家族にはおすすめです。入場料を払って、柵(さく)のはるか向こうにいるパンダやコアラ、ゾウやトラなどのメジャーな動物を見せるよりも、あきらかに子どもも喜ぶはずです。
水族館であれば、もうひとつ「タダ」になる方法があります。
熱帯魚の店に出かけるのもひとつの手。最近、熱帯魚がブームになったおかげで、全国各地に郊外店型の駐車場のついた大型ショップが建てられています。もちろん、駐車場だって「タダ」です。
さすがにラッコはいませんが、購入不可能なもの以外であれば、その種類の多さは水族館をしのぐほどです(小型のサメやエイ、陸ガメまでいます!)。逆にいえば、私たちはラッコを見るために、安くはない入場料を払っているわけなのです。
とくに動物園や水族館などは、親が子どもにとって良かれと思って出かけてみたものの、当の子どもの側は入場から数十分で飽きてしまうのが常。あとは大人の側が入場料を払ったがゆえに、泣き叫ぶ子どもを抱きかかえながら最後まで見て回る……という、何とも矛盾した時間を過ごした経験のある人も多いはずです。
それがもし「タダ」なら、飽きたらすぐに帰ればいいのです。すると、入場料を払ったがために生じた“義務”も感じなくてすむわけです。
やめて得られる“探す”楽しみ
こんな考え方は、遊園地にしても同様です。イベントを目的に「○○○ランド」などに出かけることもあるでしょう。しかし、考えてみれば、主役の子どもにとってはけっして楽しいとばかりはいえないようです。
遠くの遊園地に出かけるのであれば、汚してはならないお出かけ服を着せられ、電車に乗れば「静かになさい!」と怒られ、勝手に動けば「迷子になるでしょ!」とクギを刺され、あげくの果てには、延々と続く行列にいっしょに並ばされ……退屈との戦いを強いられます。かくして、むずかる子どもを相手に「せっかく連れてきてあげたのに、モー!」となります。
こんなことなら、近くのイトーヨーカドーなどで、集客のためにやってくる「ポケモンショー」にでも出かけたほうが数段、楽しいことでしょう。
さわぎたい放題、待ち時間なし、もちろん近所だから、子どもが眠くなったらすぐに帰れる、近所の親しい子どもといっしょに入れて、食べ物だって遊園地の価格の数分の1。大人はついつい「お金を払った」「きちんと行った」といえる場所に連れて行きたいなどと思いがちですが、子どもの気持ちを考えれば、近所でも充分なのでは? という気もしてきます。
その他、企業が運営している「お試しコーナー」や無料の美術館、工場見学、あるいは住宅展示場などなど、むしろお金を出しても楽しめないものが、ちょっと探す努力さえすれば、いくらでも見つかります。
住宅展示場……? そう思った人は、知らない家にお邪魔したときの、子どもの探索欲、喜びようを思い出してみてください。うまくすれば景品までもらえて、想像以上の遊び場となってくれることでしょう。
要は、こちらの気持ち次第なのです。
入場料を払って“確実な楽しみ”を得る代わりに、探す楽しみ、工夫する楽しみも、ぜひ味わってほしいものです。