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色彩の教科書(47)車の色と景気はリンクしている!

何事も、昔は地味、今のほうがずっとカラフル! そんなイメージをつい持ちがちだが、こと車に関して言えばこの常識はまったく逆のものとなる。
日本に本格的なマイカーブームがやってきたのは1960年代も後半のこと。66年、その後、長くライバルとなったカローラとサニーが相次いで発売されたのがきっかけだった。
時は植木等が歌って踊る高度成長期。70年の万国博覧会を目前に控え、国民みんなが新三種の神器の3C(カー・クーラー・カラーテレビ)の購入を目指して上を向いて頑張っていた時代だった。そこでついに私たち庶民が手に入れた車の色は。
68年、車の色の約50%が、赤、黄色、緑、青などの有彩色。残りが黒、白、グレーの無彩色。
その後、経済の成長とともに有彩色のグループはどんどん勢力を拡大し、70年、万博の年にはついに約80%。消費は美徳。購入したものは豊かさの象徴。その消費の中でも最も華々しく他の人の目に触れる車を、それまで家の中にさえあまり存在しなかった派手な色にしたい。そんな生活のレベルアップを手放しで喜び、自慢しあう時代だった。
反対に、人々の気持ちに元気がなくなると、車から色がなくなるという現象も見事に起こる。
70年に花開いた車総派手色時代は、73年の第一次石油ショックとタイミングを合わせるように急速に終焉を迎える。
79年には第二次石油ショック。迎えた80年には有彩色グループは30%台に。そのまま減少傾向は止まらず87年にはわずかに10%にまで落ち込む。
そこで向かえたのがバブル。80年代後半から90年代前半まで、派手な車の割合は再び増え続け、30%台後半にまで勢力を回復する。
しかし90年代前半のバブル崩壊。さらに阪神大震災。94年を境に、再び車の色は白、グレー、黒の無彩色、地味色三兄弟に支配されていきます(※あとからの分析で、バブル崩壊は90年前後と言われていますが、浮かれた私たち庶民がバブル崩壊を知ったのは随分あとでした)。
99年、有彩色グループの割合、約17%。この割合が再び上昇傾向に変化したのは2000年から2001年にかけてのこと。決して景気がよくなったわけではない。考えられるとすれば世紀末、新世紀の、あのフワフワとした期待感。新しい世紀はきっと今と変わるに違いない。そんな期待だったかもしれない。

その後、2010年時点での有彩色一派の割合は27%程度。この数字だけを見れば、バブル直前の傾向にとてもよく似ているレベルだ。

ところで、不景気で世の中や人心が暗くなると、地味な車が流行るのはなぜなのか。一説によると、不景気の時ほど先が見えず、車を買うときにも売りやすい無難な色を!という意識が働くためという調査結果もある。

いまは派手? 地味? コロナ後で、なにかが変わるのか?


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