伽藍堂な珊瑚

珊瑚礁は地球温暖化のせいでどんどん死滅していって真っ白な伽藍堂になる
唯一無二の色を見せつけるように張り巡らされていたのに呆気なく死んでいく
沖縄の有名な珊瑚たちは死んだだけでニュースで仰々しく取り扱われて、肥えて肥えて仕方のない自称専門家に語られる
うすいメガネのレンズをかけた目にはカメラにたかるスタッフしか見えていない
熱く語っているであろう自称専門家は尺の問題で喋っている途中に切られて次のニュースへと切り替わる
珊瑚は死んだ後に話題になる
必死に地球温暖化と戦ってる最中の珊瑚は話題にはならない
もう忘れ去られてしまったかのように今のニュースはくだらない若者の間で流行っているダンスを紹介し、決り文句で締めくくりニュースは終了する
死なないと、消えないと話題にはならない
しかも一時的に、だ
あの珊瑚たちはなんだったのだろうか
死んだ珊瑚は徐々に欠けていって海辺に惨めに打ち上げられる
海中のプラゴミや釣られた後に無理やりリリースして衰弱死した魚の死体と一緒に、自分の大切な色を失って
みんなみんな冬眠しちゃえばいいのに
何もかも忘れ去って、
死んだように眠ればいい
暖かい日差しに呑まれて、ああいい夢を見たとじわじわと色を取り戻していけばいい
あの肥えたおじさんのうっすいメガネのレンズが割れるくらい驚かせればいい
世界に衝撃を与えて一生語り継がれるようになればいい
だから私は死んだ珊瑚を拾うのだ
家に飾っているうちにじわじわ色づいてあの美しい姿を披露してくれるかもしれない
冬眠から覚めなくても私が温めてやる
伽藍堂の珊瑚に私が思い出を詰め込んでやるから

「私からあなたへ。陸の伽藍堂な人類より」