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誕生日に宇宙人を貰う文化
毎年の誕生日会は、両親の同僚や親戚、僕の友達とたくさんの来客がある。大人たちは僕に、周りの子たちは持っていないような、高価なプレゼントをくれる。
でも、今日だけはおかしい。来客は祖父母だけ。リビングの大きなテーブルの前には祖父母と両親、それと僕の五人だけが座っていた。食事も小さなホールケーキと見たことのないグロテスクな見た目の肉。
「ほら、ローストビーフ食べないの?好きでしょお肉?」
母がフォークであのグロテスクな肉を僕のさらに乗せようとする。周りの父と祖父母の表情はいつもより硬い。
「やめてよ!」
今までにないくらい誕生日会。僕は母の持っているフォークをはたき落とすと、自分の部屋まで走った。誰も入ってこれないように鍵をかける。僕の部屋は真っ暗になると壁紙が光る。あたり一面に星空が浮かんでいた。
ベッドにダイブして、天井を見上げた。いつも見ている天井なのに、なんだか暗い気持ちになる。布団を頭からかぶった。しばらく、すると部屋をノックする音とともに母の声がした。
「プレゼント持ってきたから。ででおいで。ね?」
しぶしぶ、部屋のドアを開けると両親と祖父母が心配そうな顔をして立っていた。
「ごめんね。だけど仕方なかったの十歳の誕生日だもの」
母は僕の頭をなでながらつぶやく。祖父母と父はその言葉にウンウンと頷いた。
「で、プレゼントってどこにあるの?」
「リビングにあるわ」
みんなと一緒にリビングまで歩く。みんな僕を心配して部屋まで来てくれた。プレゼントを貰ったら、みんなに謝ろう。僕の誕生日を祝うために来てくれたのだから。
母がリビングのドアを開くと、テーブルの上に大きな籠があった。籠を覆う黒幕で中身がわからない。
「これがプレゼントよ」
母はそう言いながら、黒幕をゆっくりとまくった。籠の中身をうかがいながら僕に手招きする。
「なに?なに?」
母は僕の肩をつかむと、「ほら、可愛いでしょう」と籠の中身と僕の顔を交互に見た。そこには、僕よりも身長の低い白いパンツ一枚のおじさんが体育座りをしていた。
「え?なにこれ?」
四人の大人を見回す。みんな喜んでいるようだった。祖母なんか目に涙を浮かべて「良かったね。良かったね」と繰り返していた。父と祖父は腕を組みながらウンウン頷いている。
「なにって、宇宙人じゃない!」
母は籠をゆっくりと開ける。宇宙人と呼ばれた、パンツ一枚のおじさんは四つん這いで籠の外に出る。はっきり言って、気持ちが悪い。宇宙人は頭のてっぺんがハゲていて、お腹が出ている。おじさん宇宙人は立ち上がると、出っ張ったお腹をぼりぼりと掻きながら僕を見た。
「お母さん。僕このプレゼントいらない」
「そんなこと言うもんじゃないぞ」
母に話しかけているのに、父が口をはさむ。おじさん宇宙人はテーブルの脇にどけられたケーキを素手でかぶりついていた。
「それ僕のケーキ!」
慌てておじさん宇宙人に近寄って、髪を引っ張る。髪をつかんだ時に、ベトッとした気持ちの悪い感触があったけれど、そんなこと気にしてられない。
「いで、いででででで!」
おじさん宇宙人は顔をのけぞらせて悲鳴を上げる。なんか、臭いし本当に嫌だ。父と祖父が慌てて、おじさん宇宙人と僕を引き離す。
「いいかよく聞くんだ。十歳の誕生日ならだれでも、宇宙人をプレゼントされるんだ。そういう決まりになってるんだよ」
父は僕をテーブルから少し離れたソファーに座らせると言った。
「あの宇宙人はな、半分大人になった証なんだ。お父さんもお母さんも、おじいちゃんもおばあちゃんも、みんな貰っているんだよ
「いやだよ!僕あんなのと一緒にいたくない!大体なんなのさ、あいつ」
「最初はみんなそうなるんだよ。あの宇宙人は地球人と言ってね……」