沖縄県視察@名護市:名護市の小中一貫教育について
名護市の小中一貫教育に学ぶ:行政視察の報告
名護市の教育に対する取り組みを学ぶため、行政視察を行いました。名護市は、沖縄本島北部に位置し、人口約6万4,000人を有する地域です。1970年に5町村が合併して誕生し、北部地域では最も多くの人々が暮らしています。市は農業、林業、漁業が盛んで、畜産業や多品目の農作物の生産が行われるほか、森林では水源涵養林の植林が進められています。また、6つの漁港を持ち、海洋資源を守りながら漁業の振興にも取り組んでいます。
自然環境にも恵まれ、山・川・海を有し、リゾートホテルやビーチ、観光施設が市内全域に点在しています。観光客数は平成28年で年間約436万人、うち127万人が宿泊施設を利用しており、観光産業も重要な地域資源の一つです。こうした背景のもと、教育環境の整備にも力を入れ、特に小中一貫教育の導入が注目される取り組みとなっています。
小中一貫校の導入背景と取り組み
名護市の小中一貫校は、複式学級を解消する目的で4つの小学校を統合し、設置されました。複式学級では授業の質を十分に確保することが難しく、統合後に特色ある教育を取り入れることで、安定した教育環境を提供しています。この決定は、名護市教育委員会が審議会で課題を議論し、地域住民や保護者との説明会を通じて地域全体の理解を得ながら進められました。
統合準備の進捗を共有するために「小中一貫だより」を定期的に発行し、情報提供にも力を入れたことで、保護者や地域の信頼を得ることができたといいます。このように、地域との協働を重視した取り組みが、現在の小中一貫教育環境を支える土台となっています。
4-3-2制による教育効果
名護市の小中一貫校では、4-3-2制を採用しています。この制度は、前期(小学1~4年生)、中期(小学5~中学1年生)、後期(中学2~3年生)という3つのブロックに分けて教育課程を編成するもので、学年進行のスムーズな移行を目的としています。特に中1ギャップの解消に大きな効果を発揮しており、小学校から中学校への移行が柔軟に行われています。
各ブロックでは、リーダーシップを発揮する機会が与えられています。4年生、6年生、7年生(中1)がそれぞれリーダー役を担い、行事や授業を通じて責任感を学び、成長していく仕組みが整えられています。また、上級生が下級生の模範となり、下級生が上級生に憧れを抱く縦のつながりが非常に良好で、学び合いの文化が形成されています。
成果と課題
成果
小中一貫校の導入により、複式学級が解消され、安定した教育環境が確保されました。教員間の連携が深まり、授業や学習内容が系統立てられることで、学びの質が向上しています。また、地域学習を含む総合的な学びも一貫して行われ、子どもたちの成長が支えられています。特に、不登校の子どもが縦のつながりを通じて克服するなど、世代間のつながりが強みとなっています。
課題
一方で、教員数を削減できる点は県にとってのメリットですが、教職員以外の職員を配置する必要があるため、市の負担が増える課題が残されています。また、校区外からの通学生が65%を占めており、PTAや地域コミュニティの活動に工夫が求められています。
部活動に関する取り組み
部活動の過熱を防ぐため、活動時間を制限し、顧問や外部コーチには暴力やハラスメントの根絶を目的とした研修を実施しています。これにより、部活動の健全な運営と生徒の安全を確保しています。
部活動の地域移行についてはまだ積極的な取り組みが進んでいないものの、他自治体の事例を参考に検討を続けています。
所感
名護市の教育に対する取り組みは、複式学級を解消し、現在の小中一貫教育を実現するまでのプロセスが非常に意義深いと感じました。この背景には、教育の質を高めようとする地域の強い意志と、それを支える行政の努力があります。特に4-3-2制による教育課程や縦のつながりを活用した学びの場づくりは、子どもたちの成長を支える重要な要素として機能しています。
説明を担当された職員の方が、実際に小中一貫校で教頭として勤務していた経験を持ち、その実践的な知見に基づいて熱心に語られていた姿が印象的でした。こうした現場の熱意が、名護市の教育環境をさらに充実させていることが伝わってきました。
名護市の取り組みは、すべてを水俣市に導入することは難しいですが、教育環境の新たな可能性を考えるきっかけとなりました。視察で得た知見を活かし、地域に適した教育環境を整えるための参考としたいと思います。