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【連続小説4】ツネダくんの休日

今日は日曜日。ツネダくんはいつも通り、実家の犬の鳴き声を録音したアラームで身を覚まし、朝のルーチンを始める。

昨日は会社でとても怒られてしまった。嫌なことがあったときにやるルーチンがある。

パソコンで公開中のミステリー映画を検索する。
最もストーリーが読めなそうな映画を探すのだ。
――よし、これだ。

昨日ツネダくんは中学時代からの親友・ヒサノに連絡し、一日空けてもらってある。

ツネダくんとヒサノは映画館で落ちあい、先ほどツネダくんが検索した映画を見た。
映画が終わり、エスカレーターを降りているとき、ツネダくんは悪い顔でヒサノに話し掛ける。
「いやあ、良い映画だったな」
「ほんとそうだわ。こっからが楽しみだ」ヒサノも合わせる。

その後、山手線へ移動し、例の遊びを始める。
二人は迷惑にはならないが、少し大きめ声で会話を始める
「いやあ、さっき見た〇〇だけどさ~」
「最後で元カノが悪役だったなんて思わなかったなあ」
「教師と親もグルだったのもビビったわ」
いつもより発音もしっかりした声で。

周囲にいる人は、特に迷惑そうにしているわけでもないが、何人かに一人は、そそくさと場を離れていく。

それを見て、ツネダくんはヒサノに耳打ちする。
「今いなくなった人、映画好きだと良いな」

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