「ローマ人の物語」 4
第6巻
アウグストゥスの、名を捨て(共和制の復帰)実を取る(各種名誉呼称を受け、護民官特権を元老院に認めさせる)戦略によって、ローマの第一人者として実質的に皇帝への道を歩む姿が描かれる。治績としては、スペインの制覇、ガリアの再編成、東方政策(大国パルティアとの講和)、属領の再構築(元老院統治下の属領と自己の直轄領としての属領)、通貨政策、内閣の創生、国税庁創設等。その多くはカエサルのやりかけの事業の継承か、カエサルの構想の現実化と塩野は理解している。
ローマ社会が直面したローマ人の少子化。この対策としてアウグストゥスが打ち出した「ユリアス二法」は、男女関係の正常化・結婚・出産の奨励を目的としているが、ローマ人をしてこの法律に従わざるを得なくするために、税制・相続・出世・不倫罪などの手当てをしているとことが面白い。27年後に終生案が出されるが、よくぞ我慢したものだと言わざるを得ない。天上のカエサル(不倫の名手?)も承継者にこんな法律を出されて苦笑?
二人の後継予定者。妻の連れ子のティベリウスとヅールスス。次男は、ゲルマン征服途上で事故死する。義理の長男ティベリウスとの間のアウグストゥスが感じる隙間風。血統の問題、身分の問題。やがて、長男は弟の死を悲しみ、隙間風を感得してローマを離れ隠遁する。
「中継者」を失ったアウグストゥスは、孫二人を後継者にすべく必要な資格と栄誉を与える措置をとるが、不幸にして下の孫は18で病死、上の孫も病死する。こうなっては帝国を支える力を持つのはただ一人、ティベリウス。アウグストゥスとの話し合いで、「養子」となったティベリウスは、「護民官特権」も与えられ、ゲルマン戦線に赴く。ティベリウスには、かつての政敵ポンペイウス派の父親がいた。その母親リヴィアはその後オクタヴィアヌス時代のアウグストゥスの妻となる。従って、連れ子としての存在であった。
現在のユーゴスラヴィア地方での反乱。ゲルマンとの戦争再開。
アウグストゥスのエルベ河を帝国の東の防衛線とする構想は、3万人強の死者を出して崩壊する。塩野は、この一点において彼の失策と見なす。
娘ユリアと孫娘を相次いで男女関係で放逐する。法の処分ではなく、家長の権限行使という形で。又、男孫も行跡に問題ありとして流浪処分。自分に厳しいアウグストゥスは、身内にも、否、身内だからこそ厳しく望んだのだと筆者はいう。紀元14年8月、77歳直前で初代皇帝は病死する。ティベリウスが2代皇帝になる。