裏長屋物語 1
今は昔、東京は江戸と呼ばれ、大層な賑わいだった。将軍のお膝元であるこの町には毎年、全国の大名が1年交替で集まり、華奢な生活をしており、その武士の生活を支えるため、商工業者など様々な人間が集まり、人口はみるみる増えていった。
江戸時代が始まり100年も経つ頃には、戦乱のない平和な時代の中で、人々は安寧を享受した。
その中で、明日への生活への不安を抱える素浪人も、この江戸に集まる。貨幣経済の浸透は否応なく貧富の差を拡大し、貧しい者は都市に出て日雇いに従事する。
この物語の中心は、江戸の片隅に密集した裏長屋の市井の者達の悲喜交交の話である。今も昔も人情は変わらない。社交性があるとか、ないとか、コミニケーション能力がとうとか、関係なく、自分を失わず、人の優しさに気づき、生きる事の尊さを教えてくれる、そんな裏長屋の人情噺が、これから始まる。
作者は言う、言う必要のない事たが、人間に唯一許された感情は、人情だ。人間だけが、己を犠牲にして、その身を捧げる事が出来る。それは、非常に高度な倫理観が存在して、誰かのために、命を投げ打つことが出来る、そんな瞬間が訪れるのだと思う。
それは尊いことだと思う。命を軽んずるのではなく、全ての生命力を発揮して、この命を全うするため、その命を投げ打つこともある。
命の重みを、心から理解した、江戸に住む名もない者たちの物語を伝えたい。
歴史を学ぶ意義を考えると、未来への道しるべになるからだと言えると思います。日本人は豊かな自然と厳しい自然の狭間で日本人の日本人らしさたる心情を獲得してきました。その日本人がどのような歴史を歩んで今があるのかを知ることは、自分たちが何者なのかを知ることにも繋がると思います。