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城はあるか。
あなたの心に不可侵な領域はあるか。
好き嫌いが希薄な性分です。
正確に言えば、嫌いという概念が薄い。
攻撃性を感知したときに身を守るために発動する“嫌い”の概念が、時たまある程度。
“好き”ばかりある。隙ばかりある。
形のない概念的なものを言葉という物質に落とし込むときに、こぼれ落ちる部分が出てくる。
また同様に、言葉の枠に充填するには希薄すぎる場合もある。
“嫌い”の感覚はまさにこの後者のようで、名付けるに試行錯誤した結果、最も適した函がそれのみだったというだけのこと。
ここが言葉の機能不全さである。
言葉の函に嵌め込んで何かを取りこぼしたり、言葉の函が過大表現になったりする。
蜂は自ら人を攻撃しない。
蜂に刺されるのは、人が蜂にとっての脅威と認識されるが故。
嫌いが希薄な性分です。そもそも他者への興味が薄い。
興味が薄い性分ながらも興味を惹かれるとき、それは強烈な魅力として私を惹き付けて止まない。
だから“好き”は過剰に漏れ出る。ときに世に言う熱烈な恋やアディクションの姿を取る。
目が眩むような好きに満たされた私は中毒者の様相を呈した隙だらけ。
それでしか生きられない身として、開けっぴろげであるがゆえ攻撃には非常に弱い。致命的です。
ですから攻撃性に対する感度が高い。
感度が高いだけである。そもそも他者への興味が薄い。攻撃性を感知したところで手も足も出ない。
私はこたつから強烈な攻撃性を感知した。
「ペンは剣よりも強し」と誰かが言ったように、物質である言葉は使いようによって武器にもなる。
防御の函になりうる“嫌い、嫌い、大嫌い”の呪文に忍ばせる攻撃性への感作。生体反応です。
これによって城が守られている。
“嫌い”とは、城の周りに張り巡らされた言葉の堀である。
自ら他者の城に踏み込むことは決して無い、自ら仕掛けることは有り得ない、警衛の係である。
城はあるか。
不可侵な領域はあるか。
変人と呼ばれぬ人が自身の城を守るやり方を、どうか教えてください。
本当に。知りたい。
……またね。