「より安く」の時代のその先に。
先日、欧州系プライベートバンクの勉強会に参加をしてきました。
著名なマクロ経済のアナリストによる講演で、今後の世界経済についての見通しを数年から数十年単位で分析したものでした。
非常に興味深く聞き、大きな時代の転換点を迎えているとの感触を得ることができました。
特に世界の分断によるグローバリゼーション終焉、物価動向、人口動態からの経済構造分析が面白かったですね。
個人的にとても印象的であったのは、「世界的な人手不足時代突入」という視点でした。
世界中で少子高齢化が進展しており、従って、生産人口が減少することを意味するとのことです。日本だけでなく、これが世界で起こっているのです。そして、世界の分断によるグローバリゼーションの終焉とも相まって、経済構造自体が変化していくということです。
過去20年のグローバリゼーションは「世界で最も安く作る」ということをしてきた時代だったと言えます。
「失われた30年」。日本の経済不振、デフレはこのような世界経済の背景で進展したのではないか。こう考えることもできるかなと思います。
企業は競争上「より安く」作る必要に迫られてきました。
代表的なのは、生産拠点の世界展開とカイゼンですね。このような事業戦略は非常に評価されていました。それが最適化された戦略であり、非常に合理的であったことは納得感を持っています。
しかし、今考えると、働く側は、ある側面では「過酷だったな」とも感じています。
「より安く」は人々を疲弊させてきたなぁと。
無理に無理を重ねてきたということ。さらに閉塞感もありつつ。賃金も上がらず。
そういえば、「ブラック企業」という言葉もまさにその象徴かもしれないです。
2000年代後半を振り返って俯瞰した時、「ブラック企業」という言葉には「より安く」というグローバリゼーションが背景にあったのではないかと思うのです。(ちなみに私は2000年代後半に就職しましたので、リアルですね)
この25年近く、人を大事にしてこなかった時代だったかもしれません。
もちろん、少なくとも個人的には経験を得ることで成長した部分もありました。そこにはとても感謝しています。
それでもそう思わざるを得ないのが、正直な私の意見です。
しかし、時代は変わりました。
そもそも、人手が足りなくなったのですから。それも世界的にです。極限まで人を「より安く」使うということは事業遂行に支障を来たすようになったと思います。
「より安く」は少し諦めなければならなくなったのかもしれません。
もちろん、より安くという面は需要サイドへの貢献としても、供給サイドの収益確保としても、努力はしていかなければなりません。まずそこは前提にありますので、誤解にないように記しておきます。
「より安く」の時代、この先に何が待っているのか?何が必要なのか?
私は「付加価値」であると思います。
では、「付加価値の源泉とは何でしょうか?」
人々の「創造性=クリエイティブ能力」であると考えています。
社員への向き合い方は変わらなければなりません。そう強く思います。
例えば、ある一定の基礎的スキルは身につける必要があるということを前提として、「労働時間」の定義も異なってきますね。なぜなら、クリエイティビティは時間ではないからです。
制度や教育体系というハード面はもちろんですが、経営者マインド自体を転換しなくてはならないと考えています。
経営者それぞれに、「〜あらねば、ならない」という一家言がある方も多くいらっしゃることと思いますし、経験から導き出された方程式もあるでしょう。ただ、一つだけ念頭に入れておいていただきたいのは、時代は転換したいうこと。
「甘い!」そう思われた方。
私は違うと思います。
逆にキツい時代にもなったようにも考えることもできます。なぜなら、より独自のアウトプットが求められるというキツさが出てきたからです。
であるなら、社員は自分の得意なことを伸ばす努力をするべきですし、経営者はそれをサポートすることに徹することが今後より求められるのではないでしょうか。